掛布氏 能見に期待「真のエースへ」
2014年の阪神の野球は「打倒巨人」ではないと思っている。昨年度の対戦成績を見て見ると、5位チームの横浜に10勝14敗と4つも負け越していて、広島には12勝12敗の5分。今季は「巨人以外のチームに、いかに勝てるか」を戦略として頭に入れておいたほうがいい。ここまでのセ・リーグの各チームの戦力補強の行方をチェックしてみると、巨人が、頭ひとつ抜け出ているが、他のチームに、それほど大きな戦力差はない。 [表・記事]掛布が語る 阪神「31」の後継者は? ■戦力流出 助っ人は未知数 阪神は、これまで投手力で一歩リードしていたが、計算のできるローテー投手だったスタンリッジが退団してソフトバンクへ移籍。抑えから先発で再出発する予定だった久保もFAで横浜へ移籍した。4番候補の新外国人、ゴメスは未知数。ストッパーのオスンファンも、まだ日本球界での実績はない。そういうチーム状況で昨年のように「打倒巨人」だけを掲げていると足元を救われる危険性がある。2014年のシーズンは、阪神は巨人を見て戦うのではなく、自分たちの野球の形というものを整えなければダメだろう。 ■重責を担うエース・能見 「打倒巨人」の看板を下ろした時に重要になってくるのが能見の役割である。表を見てもらいたいが、能見の昨季登板を見ると非常に偏りがあるのがわかる。巨人に8試合、中日に7試合。特に巨人に対しては意識的にぶつけられていた。だが、その巨人戦には3勝3敗で、貯金は作れず、ヤクルト、広島に対しての防御率は1点台なのに、広島に1試合、ヤクルトに2試合しか登板していないため、せっかくの相性のいいチームに対しても貯金を稼ぐことができなかった。 私は2014年のシーズンには能見にチームトップの勝ち星を稼ぐと同時に、貯金を作る投手になって欲しいという期待がある。もっと先の将来を睨んで、今年の開幕投手が藤浪ということになるのならば、対巨人の意識的なローテーというものからも能見は自然と外れるだろう。ならば徹底的に負けない投手にこだわって欲しいと思う。 ■チームに貯金をもたらす真のエースへ 私が理想としているエースの最低条件は、貯金「8」以上と、200イニングのクリアである。私は昨シーズン、「エースになるべきは能見だ」という話を至るところでしてきた。広島とのクライマックスシリーズでは、結局、能見には登板機会がなかった。後で聞くと、どこかに故障を抱えていて無理できなかったことが理由のひとつだったらしいが、きっと彼なりに、心の中で思うところはあったと思う。そういう悔しさを今シーズンは、「打倒巨人」にこだわらず、チームに貯金をもたらす真のエースとなることで晴らして欲しいのである。 (文責・掛布雅之/野球評論家/構成・本郷陽一)