第156回直木賞受賞、恩田陸氏会見(全文)自分には縁のない賞だと思っていた
東北的な表現者が直木賞を受賞したということについてどう思うか
河北新報:河北新報社のカタヤマと申します。おめでとうございます。 恩田:ありがとうございます。 河北新報:今回の作品は、西洋音楽の世界を描きながら、東北の宮沢賢治が出てきたことがすごく深く心に残ったんですけれども、今回、直木賞を受賞した作品の中に非常に東北的な表現者が出てきたっていうことについて、を出した作品が受賞したということについて、どう思われますでしょうか。 恩田:でも、途中で宮沢賢治の『春と修羅』っていう曲が出てくるんですけど、宮沢賢治はものすごい音楽的な人だなと思っていたので、それで使ったんですけど。読んだ方が、これ、架空の曲なんですけど、この曲が聞こえるような気がするって言っていただいたのが、すごくうれしかったので、そういう意味では宮沢賢治の『春と修羅』っていう世界を読者の頭の中に鳴らせたのかなと思うと、すごくうれしいです。 河北新報:ありがとうございます。 司会:じゃあ。こちら。
音楽を言葉で表現してみて、難しかった、手応えが得られたこととは?
記者1:(※判別できず)新聞のカワムラと申します。受賞、おめでとうございます。音楽を言葉で表現するというのが、非常に難しいというふうに、今回の選評でもその部分を非常に高く評価されてる意見が多かったんですけれども、ご自身で書いてみて、やはり相当つらかった部分、あるいは難しかった部分と、あるいは自分なりに手応えが得られた部分、何かその辺りでご感想がありましたら、伺えればと思います。 恩田:そうですね。本当に書くのは難しかったんですけれども、でも逆に書いていくうちに、読者がそれぞれ自分の想像する音を鳴らせるという意味では、音楽と小説は意外と相性がいいなっていうふうに思った部分もありまして。確かに演奏のシーンとか、いろんなバリエーションを考えるのはすごくつらくて、あとにいくほどつらかったんですけども、書いてみて意外とその音楽と小説に近いところはあるっていうのがすごく実感できたので、そういう意味ではすごく勉強になりました。