【社会人なら知っておくべきイマドキ知識】植物から燃料を作る「バイオ燃料」は3つの種類がある! 2つはもう実用化されていた
植物由来の燃料がなぜカーボンニュートラルなのか?
カーボンニュートラルを目指す上で、燃料にバイオエタノール(バイオマスエタノール)を使用するという選択肢がある。いわゆる再生可能エネルギーのひとつで、植物などから生成されるエタノール(アルコール=エチルアルコール)のことを指している。 【画像】エタノール燃料の燃料電池で稼働する日産の工場 植物由来の燃料がカーボンニュートラルと見なされる所以は、植物が光から得たエネルギーを使い、大気中の二酸化炭素からグルコースのような炭水化物を作り出す際、その反応過程で酸素分子を大気中に放出する働き(光合成)があるためで、光合成で消費する二酸化炭素の量と、その植物由来の燃料を燃やした際に発生する二酸化炭素の量がプラスマイナスゼロになると見なせるからだ。 こうした意味で、バイオエタノールはカーボンニュートラルな燃料と扱えるのだが、問題は人類の食料となる植物を燃料として使うことが、飢餓に苦しめられている人たちが存在する現状で、はたして正しい手法なのか否かという点にある。 つまり、食用となる植物を食用として使わず、バイオエタノールにして燃料として使うことはいかがなものか、という社会観である。使用済みの食用油を回収、燃料として再生する手法が有効だと認められるのは、こうした問題をクリアしているからだ。 では、実際に試されているバイオ燃料とはいったいどんなものなのかを探ってみることにしたいが、まず、バイオ燃料とはいった何なのか、から考えていくことにしよう。
バイオ燃料には大きく3種類の原料がある
バイオエネルギー(燃料)とは、バイオマスを基にしたエネルギー資源のことで、バイオマスとは生物資源(bio=バイオ)の量(mass)を表す言葉である。その意味は「再生可能な生物由来の有機性資源で、化石燃料を除いたもの」と定義されている。簡単にいってしまえば、地球上に存在する動物、植物を合わせた生物に由来するエネルギー資源を指す言葉だ。ちなみに一般的にいわれる「有機」とは炭素のことを指し、この反対語として「無機」(炭素を含まない)という言葉が存在する。 さて、燃料として利用できるバイオエタノールだが、現在、大まかにわけて3種類の原料が存在する。 その3つは、糖質原料(サトウキビ、糖蜜など)、デンプン質原料(とうもろこし、麦、芋類など)、そしてセルロース系原料(稲わら、廃材木など)で、糖質原料およびデンプン質原料は実用化されている。バイオエタノールは、ガソリンに代わる燃料として考えられており、じつは現在、世界各地でガソリンに混入されE5(5%混入)、E10(10%混入)といった種別で販売されている。 余談だが、セルロース系のバイオ燃料は、原料に含まれるセルロースを分離後、セルロース酵素を用いてグルコース(いわゆるブドウ糖)に分解。このグルコースに微生物を加えてエタノールを作る方法は、第2世代バイオ燃料として研究が進められ、期待度の高い燃料となっている。 植物油(菜種油、オリーブ油、大豆油など)、魚類、豚脂、牛脂などの生物油、あるいは廃食用油(てんぷら油など)を原料とするのがバイオディーゼルだ。文字どおりディーゼル機関を想定した燃料で、バイオエタノールのようにアルコール発酵をさせる作業が必要ないため、よりシンプルに作り出せる燃料となっている。 ただし、原料が油類であるため粘性があり、そのままでは燃料系を詰まらせることになるため、原料に含まれるグリセリンを除去して粘性を下げる作業が必要となる。やはりバイオエタノールの場合と同じく軽油に混合され、B10(10%混入)、B20(20%混入)と表記されている。また、B100(100%)という仕様の燃料もある。 そして、バイオジェット燃料がある。燃料の燃焼圧力を後方に排出、それを推進力とするのがジェット(ターボファン)エンジンで、現状、燃料にはケロシン(Jet A=ほぼ灯油と考えてよい)が使われている。このケロシンにバイオ燃料(植物油、使用済み食用油、藻類、牛脂由来)を混入して使う方法が試されている。 植物が成長過程で行う光合成により、その植物から作られるバイオ燃料は、二酸化炭素に関してプラスマイナスゼロ、カーボンニュートラルの考え方が成立することになる。
大内明彦