今できることに全力を尽くして掴んだチャンス(後編)「大事なのは、バスケ以外の日常を疎かにしないこと」(Bリーグ・川崎ブレイブサンダース 益子拓己)
高校時代から全国大会で名を馳せてきた選手が揃う拓殖大学の練習へ参加すると、「当時はヒョロヒョロですし、大学生にボンボン飛ばされてシュートを決めた覚えもないです」と全く通用しなかった。そんな益子の下へ、池内監督から「絶対に来て欲しい」と誘いを受けたことに驚くとともに、環境が一変する。日本一を目指すチームへ迎えられたはずだったが、前年にリーグ戦で最下位になったことで自動降格し、関東大学2部からのスタートだった。1年で1部復帰を果たすも、2年次はコロナ禍でほとんど試合ができない状況に見舞われる。インカレへつながるトーナメントに敗れ、4試合しか公式戦がなかった。3年生からは主力となり、全国大会であるインカレにも出場したが、「拓大時代は全然勝てなくて、勝つことが珍しいチームでした」と振り返る。それでもキャプテンとして、チームを盛り立てていたのも益子の長所である。 「声を出したり、鼓舞したりというリーダーシップは、ミニバスの頃の経験が活きていたのかもしれません。コーチをしていたお父さんは怒ることなく、ミスしてもグッドプレーならばメチャメチャ盛り上げて褒めてくれて、それは僕だけではなくチームメイト全員に同じように接してくれました。その経験により、流れが悪いから声が出ないとか、流れが良いから声を出すという感覚もなく、常に声を出したり、チームを鼓舞したりするのが自分のバスケスタイルなのかなと思います」 高校時代はBチームから、大学でも最初からプレータイムを与えられたわけではなく、なかなか勝ち星には恵まれなかった。それでも、最上級生のときには必ずキャプテンを任され、チームからの信頼も厚い。「どのカテゴリーに入っても下から這い上がる環境ばかりだったので、練習参加だけでも慣れているところはあったのかもしれません。全然、苦ではなかったです」と常に前だけを向き、今できることに全力を尽くしてきた。日常を疎かにしないことが、チャンスを掴む秘訣かもしれない。 「バスケ以外のところを大事にしているかなって、自分でも思います。プロ選手がバスケをがんばるのは当たり前です。だから、そこで勝負しても僕のようなエリートではない選手は勝てないので、違うところで差をつけるしかないなと思ってがんばっています」