じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」
「うつ」とはどういう状態か
自分がうつなのか、それとも単に気分がふさいでいるだけなのか、不安になる人もいるでしょう。医学的には「うつ病」の診断基準は次のようになっています。 (1)一日中、気分が落ち込む。 (2)何事にも興味が湧かず、喜びを感じられない。 (3)食欲がなくなり、体重が減る。 (4)よく眠れない。 (5)焦って落ち着かず、じっとしていられない。または身動きが取れない。 (6)疲れやすく、気力が出ない。 (7)自分には価値がない、何かあると自分が悪いと思う。 (8)物事に集中できず、ものを決められない。 (9)この世から消えてしまいたいとか、死にたいと思う。 このうち(1)または(2)を含む五つ以上に当てはまると、うつ病と診断されます((3)と(4)については逆の場合、すなわち過食で体重が増えるとか、寝すぎるということも含まれます)。 ほかにもくよくよして、何もできず、一日ぼーっとして何も考えられないとか、頭が働かない(「思考渋滞」といいます)とか、元気が出ず、嬉しいことがあっても気が晴れないとか、ほとんど口もきかないなどの症状もあります。 また、本来のうつ病の特徴として、「日内変動」と「自責傾向」があります。日内変動は、午前中に症状が重く、午後から夕方にかけてやや軽快するというものです。午前中にはまた一日を生きなければならないという精神的な負担があり、夕方近くになると、やれやれ一日が終わるという安堵があるせいだと考えられます。 自責傾向とは、(7)にもある通り、悪いことはすべて自分の責任だと考えて、罪悪感を抱くことです。 いずれも高齢者のうつにも共通していますから、逆に言うと、朝から晩までずっと調子が悪いと言う人(日内変動がない)や、調子が悪いのをだれかのせいにする人(自責傾向がない)は、うつ病ではないことになります。本格的なうつ病になると、ほとんどしゃべらなくなりますから、愚痴を言い続けている人はいくら憂うつそうでも、うつ病ではないことになります。 厳しい言い方になりますが、そういう人は病気ではなく、性格の問題です。 さらに連載記事<長生きして「心安らかにすごす」のはこんなに難しい…「高齢者」が「うつ」を発症する「8つのきっかけ」>では、高齢者がうつを発症するきっかけについて具体的に解説します。
久坂部 羊(医師・作家)