投票率最低で自公圧勝の衆院選 再び注目の小選挙区制をどう考えるべきか 飯尾潤・政策研究大学院大学教授
そうした反省もあって選挙制度改革が行われ、その間には政権政党が交代するという政権交代も経験した。その時の民主党の失敗から、現在の選挙制度に否定的な見方も多い。民主党は小選挙区制のおかげで政権を取ったのに、政策的な一体性を保つことができず、総選挙において壊滅的な結果が予想される分裂へと走ってしまった。ただ、これは民主党の問題なのであって、選挙制度の問題ではないのではないか。また、今回の総選挙のように、野党側の政策の整理が不十分で、明確な選択肢が示されないときには、不満が高まる。政策をばら売りしてくれた方が、便利だという感覚も出てくるのである。しかし、選挙後の各党が与野党に分かれるということを考えたとき、選挙の時に有権者が苦痛を感じないことだけを優先するわけにはいかない。現実に日本の有権者は、政権への評価によって支持を変える人々が多く、選挙結果が政権への評価や期待をもとにした選挙結果が出ることが多いのである。ただ、小選挙区制であっても比例代表制であっても必要になる政党の組織性が低く、政党の政策が整理された形で示されないという問題があることには注意が必要である。政策間の優先順位付けや、ねじれた選択肢などの問題は、有権者も苦しみながら、政党の立場を整理するよう働きかけを行うしかないと考えた方がよい。 ただ、小選挙区制度では小党が排除されがちであり、議席変動が大きくなりすぎる心配もあるので、日本の衆議院では小選挙区に比例代表制を組みあわせている。小選挙区制は二大政党制を生みがちだといわれるが、現在の制度、小選挙区比例代表並立制では二大政党制になる可能性は低く、主要政党にいくつかの中小政党が協力し合うという二大陣営化が果たされるかどうかがポイントとなろう。選挙制度について考えるときには、人々の政策的選好の反映とともに、どのようにして政権が樹立されるのかを考慮して議論がなれることが大切だ。 --------------- 飯尾潤(いいお じゅん) 政策研究大学院大学教授、政治学。著書に『現代日本の政策体系』(ちくま新書)『日本の統治構造』(中公新書)、編著に『政権交代と政党政治』(中央公論新社)など