投票率最低で自公圧勝の衆院選 再び注目の小選挙区制をどう考えるべきか 飯尾潤・政策研究大学院大学教授
逆に、比例代表制の場合には議会の多数を占める政党が生まれることは少なく、政権の安定のために人為的に第一党にボーナスを与えるなどの制度をとる国もある。また、そうした措置がなければ、選挙後にいくつかの有力政党が連立交渉によって、政権のかたちを決めるということもしばしば見られる。この場合には、有権者の意向とは関係なく、交渉によって政権の姿が決まることになる。また、比例代表制は大きくまとまるインセンティヴがないので、主張が多様化すればするほど、小党乱立を招きやすいので、5パーセント条項などで、小政党を排除する制度を持っている国も多い。つまり、比例代表制においても投票結果を議席配分に忠実に反映させることは現実には難しい。また、連立交渉を考えれば有権者が自らが投票した政党に交渉の自由(これは公約を自由に変えることを意味する)を与えることも必要になるため、有権者は好きな政党を選べるように見えるが、それが実現するかどうかは不明確になるのである。 小選挙区制度の場合、有権者から見れば、小選挙区選挙で候補を選ぶことは、その候補の政党を選ぶことにつながり、それはそのまま政権を選択することになる。政党が政策を掲げて選挙をしていれば、選挙で候補を選ぶことが政策を選び、政権の政策を決めるという直接的な関係が生まれる。ただ、小選挙区制のもとでは、上位2位までの政党が有利になるため、政党の数が少なくなるという効果もある。政党の側から見れば、生き残りのためには合同するか協力するかのインセンティブがはたらきやすい。 改革前に日本の衆議院で用いられていた中選挙区制は、大選挙区制の一種であり、5人とか3人といった当選者が出る選挙区が設定された。そこで、政権を目指す政党は一つの党で複数の候補者を擁立するので、同じ政党の候補者同士が激しく競争をする。また、政権を取るのをあきらめれば、1人だけの候補者を立てられるので、こちらは比較的楽な戦いができる。現実には、政権を目指すのは自民党だけであって、野党は分裂したまま自民党政権が永続していたのである。中選挙区制では、政党や政権、政策の関係について一貫した関係を作るのが難しいので、候補者が有権者におもねってサービス合戦に走り、金権政治を誘発するといった問題も指摘されていた。