<3分でマイクオフ>進行台本に記載されていた 水俣病被害者と伊藤信太郎環境大臣の懇談 環境省の官僚たちがマイクをオフってでも守りたかったものは?
公開された「当日の進行マニュアル」
当日の進行マニュアル、「水俣病関係団体との懇談シナリオ」が公開された。そこに書いてある内容は被害者の声をじっくりと聞こうという姿勢がおよそ感じられるものではなかった。 シナリオは約40分間の懇談を、分刻みのスケジュールで進められるよう、分単位で進行予定時刻が記入されている。 そして、問題となった各被害者団体の発言意見表明の部分では、団体側から不測の求めがあった場合や、持ち時間が近づいた場合を想定して、それぞれの対応方法が「網掛けの文字」で詳細に記述されていた。(以下、抜粋する)
進行台本に記された<3分でマイクオフ>
(途中、大臣にコメントを求めるようなことがあった場合) 冒頭申し上げましたように、皆様の声を限られた時間でお聞きする場でございますので、後ほど大臣からまとめて発言すること、ご理解いただきたく存じます。では、ご意見を続けてください。 (時間を短くしたから後でしゃべらせろと言われた場合) 各団体の御発言の後に、大臣から発言することとしておりますので、その後にと言うのは、進行上、時間を見つつ対応させてください。 ↑上記から、かなりタイムキープに注意を払っていて、被害者側が自由に思いを語ることを制御しようとしていることがうかがえる。そして、持ち時間が近づいた場合の対応は以下のように書かれていた。 (持ち時間が近づいた場合) お話中申し訳ありませんが、他の団体様のお時間もございますので手短にお願いいたします。<3分でマイクオフ> ↑他の団体の持ち時間を理由にしているが、はっきり、持ち時間3分を超過した場合はマイクをオフにすると書かれている。この対応が、発言者である被害者にどのような気持ちを抱かせるか、想像できなかったのだろうか…。
なぜ?環境省の職員らに直接聞いてみた
立憲民主党のヒアリングを終えて、部屋を出てきたのは、司会進行を担当していた木内室長と、神ノ田部長。なぜこのような運用を行ったのかなどを直接聞いた。 ・時間が押してしまった去年の経緯もありマイクの音声をオフとする運用が引き継がれていた ・発言時間がオーバーしていることを進行役が何度か指摘した後に、マイクをオフとするはずだった ・大臣には、懇談がこのシナリオで運用されることまでは共有していない 彼らはこのように弁明した。ただ、私の質問のほとんどは、神ノ田部長が答えた。言葉少なにそばに立っていた木内室長の顔は青ざめていたように見えた。
進行シナリオの最後に「大臣ご挨拶 最低でも3分」
職員たちはいったい何を守ろうとしていたのか。被害者に寄り添うのはポーズで、大臣や政治家への配慮を最優先にして働いていたのではないのだろうか。 ヒアリングで環境省の部長が話した「大臣をお守りすることができなかった」という発言は、批判されたからこそ出た気持ちが思わず漏れてしまったのではないだろうか。 進行シナリオの最後には、こう記されていた。 16:32 伊藤大臣 (ご挨拶)※最低でも3分は欲しいところ。 単なる懇談の不手際では終わらせられない、日本の官僚たちに染みついたある種の体質を垣間見た気がした。(MBS東京報道部記者兼解説委員 大八木友之)