底を突いた余剰貯蓄、米経済に忍び寄る個人消費急減速の足音
コンファレンスボードのチーフエコノミスト、ダナ・ピーターソン氏は「消費の減速はすべて米金融当局の計画の一部だ」と指摘。「しかし、それを実際に調整するのは難しく、個人消費が縮小しすぎるのではないかという懸念がある」と述べた。
ニューヨーク連銀の調査によれば、米国の家計債務は過去最高を更新し、クレジットカードの支払いが滞る消費者が増えている。米国勢調査局による最近の調査では、通常の家計支出を支払うのが「やや困難」または「非常に困難」との回答が全体の3分の1に上った。
小売企業の一部からは消費者の行動変化を巡る警告も発せられている。 ディスカウントストアを展開するターゲットのチーフ・グロース・オフィサー、クリスティーナ・ヘニントン氏は、同社が目先の成長見通しに慎重なのは、家計の債務水準が理由の一つだと述べている。ウォルマートのジョン・デービッド・レイニー最高財務責任者(CFO)は、買い物客は必需品への支出を増やしているが雑貨の購入は減らしていると語った。
ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、ティム・クインラン氏は「消費者は支出を続けているかもしれないが、それが負担になっている」と指摘。同氏が商務省のデータを分析したところ、米消費者の可処分所得に占める住宅ローン以外の利息支払い額(クレジットカードや自動車ローンなど)の割合は4月に2.4%となり、2008年以来の高水準となった。
クインラン氏は、2024年後半には個人消費の伸びが鈍化すると予想している。
ただサンフランシスコ連銀の研究員も認めているように、コロナ禍に積み上がった貯蓄がどれほど残っているか、それが支出にどんな影響を与えるかについては、計算方法が多岐にわたるため不確実性を伴う。
実際、過去数年の住宅価格上昇や株価の記録的上昇を背景に資産が大幅に増えた人もいる。こうした富を増やした家計による支出継続が、個人消費全体を押し上げる可能性はある。