デジタルの技で正倉院宝物を再現模造…CT画像などデータ駆使、1年がかりで完成
「第76回正倉院展」が開かれている奈良市の奈良国立博物館で2日、公開講座があった。宮内庁正倉院事務所の田中陽子・保存課整理室長が「紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく)再現―伝統技術とデジタル技術の融合―」と題し、宝物とともに会場で展示されている再現模造の制作過程を説明し、約180人が聴き入った。 【画像】奈良県 再現模造は、1年がかりで3月に完成。表面を覆う錦は、皇居で育てられた日本純粋種の蚕「小石丸」の糸やニホンアカネの染料を使ったことを紹介した。
再現模造は、1年がかりで3月に完成。表面を覆う錦は、皇居で育てられた日本純粋種の蚕「小石丸」の糸やニホンアカネの染料を使ったことを紹介した。 また、X線CT(コンピューター断層撮影法)画像などのデータに基づき芯の素材や構造を決めたと説明。「宝物のゆがみなども踏まえてどのような状態に再現するか検討し、バランスよく仕上げられた」と話した。 斑鳩町の女性(71)は「古来の技法を守りつつ、新たな技術を追求する両面の努力で、再現模造が作られたのだと感心した」と話していた。