中学受験、なぜ?突発的に倍率が5倍に急上昇した普連土学園…増加する全落ち中受生
中学受験ブームに首都圏の保護者たちが湧き立つなか、近年「全落ち」してしまう受験生が増えている。「全落ち」とは文字通り、受験したすべての学校に不合格となり、不本意ながら公立中学への進学を余儀なくされるケースだ。受験家庭にとって最も避けたい事態だろう。 なぜこのようなケースが増えているのか。背景には、受験者数の増加や入試形式の多様化など、さまざまな要因が絡んでいる。中学受験の赤本を出版している声の教育社の社長、、後藤和浩さんは「倍率チェックの重要性」を語る。 今回は全落ちが起こる背景と、それを防ぐための対策について詳しく伺った。 短期集中連載全3回の第2回目ーー。
偏差値だけで読み解けない、入試難易度
近年の中学受験の加熱により、思わぬ不合格、その結果による「全落ち」が至るところで起きています。この背景にあるのは、倍率の急上昇にあります。 では、なぜ倍率の急上昇が起きるのか。なぜ、偏差値だけで志望校の合否を占ってはいけないかをお伝えしたいと思います。 学校の入試難易度を指すもっとも一般的な基準は、なんと言っても偏差値です。偏差値は模試のたびに目にしますし、志望校の偏差値は受験家庭であればかなり強く意識しているはずです。 一方、倍率とは合格者数に対して、受験者数が何人かという比率を表す数値です。過去数年の数値と出願が決まってからの速報値を見ることができますが、あまり気にしていないご家庭は多いかもしれません。 講演会などで「中学受験において、倍率も重要です」とお伝えすると、「いや、倍率も含めた難易度は偏差値に反映されるのでは」とご質問を受けることが多いです。実はここに落とし穴があるのです。 倍率について知っておいてほしいことが2つあります。1つはその年の出願傾向によって、倍率は急激に上昇する可能性があること。もう1つはその倍率上昇は、その年の偏差値に織り込まれていないということです。
突発的に倍率が5倍近くになる学校も
例えば、普蓮土学園の第3回試験では昨年の倍率が1.4倍だったにもかかわらず、今年は5倍に急上昇しました。また、佼成学園は1.7倍から17.0倍(2020年→2024年/一般第3回2科)、実践女子は1.2倍から5.7倍(2020年→2024年/第5回午後入試)とコロナ前後で大きく上昇しています。 近年、中学受験ではこうした突発的に人気が高まる学校が増えています。倍率が急上昇すると、受験難易度も当然上がります。しかし、偏差値だけ見ても、この難易度の上昇には気づけません。 なぜなら、偏差値はその年の受験が終わった後に、その複数年にわたるデータを踏まえて算出されるからです。
学校の良し悪しと倍率は無関係
興味深いのは、学校の設備やカリキュラム、進学実績といった基本的な要素がそのままにもかかわらず、突如として倍率が跳ね上がるケースが多く見られることです。 その結果、昨年までなら十分合格していたはずの偏差値帯の受験生が、不合格になる事態も発生しています。学校の流行り廃りは時代ごとに変化するものですが、ここまで大きな変動が起きるのは珍しいことです。 偏差値だけを基準に学校を選ぶご家庭が多い中、こうした突発的な変化を見過ごすと「思わぬ不合格」を招く可能性があるのです。
後藤和浩