マーラーを翻弄した“第九のジンクス”とは? 名曲『交響曲第9番』の裏に秘められた思い【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
マーラー『交響曲第9番』 “第九のジンクス”に翻弄されたマーラーの想いとは
今日6月26日は、グスタフ・マーラー(1860~1911)の交響曲第9番の初演日です。 交響曲第8番を完成させたマーラーは、続いて手がけた『大地の歌』に、第9番の番号を与えませんでした。その理由は、先達であるベートーヴェンが第10番を完成できず、ブルックナーは、10曲の交響曲を完成させたものの、11番目に当たる第9番を完成できずにこの世を去ったという“第九のジンクス”を、自らの病弱に重ねて恐れたからだと伝えられます。 その後、健康不安を払拭したマーラーは、意を決して交響曲第9番を完成させますが、第10番を完成させることなくこの世を去ってしまったために、“第九のジンクス”を実証した形となってしまったのです。 初演は1912年6月26日ウィーン。本来ならば自ら指揮をするはずであったマーラーは、初演の約1年前にこの世を去ってしまったため、マーラーと親交の深いブルーノ・ワルター指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われています。“死や別れ”といったテーマが色濃く感じさせるこの曲は、マーラーの最高傑作とたたえられる名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
家庭画報.com