「統合失調症の娘の虚ろだった目が生気を帯びてきて…」講談師・神田香織さんを支えた1冊の本と、映画「生きて、生きて、生きろ。」
今夏は講談「はだしのゲン」パート2も
さて、肝心の治療の方は、前回お知らせしたように膝から下が残っている左足に義足をつけてリハビリテーションをするため、相談員の方が民間のみならず、市立、県立、国立の精神科があるリハビリーションセンター数カ所、さらには前にお世話になった都内のセンターにも問い合わせてくれたのですが、そのすべてで断られました。 理由は精神科の先生がいても病棟が無い。あるいは症状が悪くなった時に対応ができない、といった最悪のケースを考慮しての判断です。 相談員の方が「症状が悪くなったらこちらで引き取る」と言っても断られたとのことですが、せめて公立の病院は受け入れを前提に検討してほしいと願います。 話は戻りますが、私はトークをこう締めました。 「この映画は最初から泣かされて、最後も泣かされるのですが、最初の涙と最後の涙は違うんです。どんな絶望の淵に立っていても、何かをとっかかりとして一日一日を生きていくことができることをこの映画は教えてくれました」 まさに今のミーもその通りだと思うのです。フェイスブックのミーの写真に「元気そうでよかった」「目がしっかりしてきたね」とコメントをいただきました。ミーにとっての「とっかかり」は自分のことを励まして、応援していくれる人たちがいる、ということだと思うのです。 メディアのコラムという場をお借りして申し上げるのも恐縮ですが、今までずっと沈黙を守ってきた私からあえてあらためて言わせて下さい。どうかこれからもミーを応援してもらえましたら幸いです。 最後に今夏は実に18年ぶりに「はだしのゲン」の続編「パート2」を高座にかけます。 ウクライナ戦争、そしてガザ攻撃でも多くの命が失われています。その姿は戦時中、原爆投下や東京大空襲をはじめとした各地への空襲、沖縄戦などで殺戮されたわが国の赤ん坊や子どもたち、女性、お年寄りたちと同じです。 戦争体験者が少なくなっている今こそ、ゲンの姿を通じて戦争の惨禍を我がことと感じてもらいたいと願います。 文/神田香織
神田香織