英中銀のベイリー総裁、雇用主の税負担増は段階的な利下げを正当化
(ブルームバーグ): 英政府が雇用主の税負担を増やす方針を示したことを受け、イングランド銀行(英中央銀行)は借り入れコストの引き下げに慎重なアプローチを取らざるを得ないと、ベイリー総裁が指摘した。
雇用主は、雇用コストを押し上げる国民保険料の雇用者負担の引き上げに対して、消費者への転嫁、コスト吸収、賃上げペースの減速、あるいは雇用削減といった対応策を取る可能性があると、ベイリー総裁は19日に下院財務特別委員会への年次報告で指摘した。
「秋の予算で発表された雇用主の国民保険料負担の引き上げが経済にどのような影響を及ぼすかについてはさまざまなケースが考えられる」とした上で、「金融政策による景気抑制を段階的に解除していくアプローチは、インフレ見通しに対するその他のリスクとともに、この影響がどのように作用するかを観察するのに役立つだろう」との考えを示した。
先月政府が発表した予算案が、すでに不透明な英国の経済状況をさらに複雑にしていることが浮き彫りになる。地政学上のリスクやサービスインフレの高止まりも、中銀の政策に影響を与える要因となっている。
雇用主が負担する税率が13.8%から15%に引き上げられることは、最低賃金の引き上げと相まって、企業にとってさらなる重荷となる公算だ。予算が最終的に物価上昇につながる場合、中銀はより長期にわたって金利を高水準に維持しなければならなくなる可能性が高い。
ベイリー氏は、中銀の現在の予測を超えた「賃金上昇圧力の長期化」を警告した。中銀が調査した企業は、労働市場が緩和の兆しを見せているものの依然として比較的逼迫(ひっぱく)している状況下で、今後1年の賃金上昇率を4%と予測している。
ベイリー氏は19日に下院財務特別委員会証言した銀行金融政策委員会(MPC)メンバー4人の1人。同氏は委員会で、英国小売協会(BRC)がリーブス財務相に宛てた書簡を引用し、税率の変化が主に雇用削減という形で企業に転嫁される「リスク」があると示唆した。