野球王国・愛知の“頑張る公立校”が面白い! 私学隆盛の中での奮闘、「新基準バットは追い風だ」と甲子園へ虎視眈々
「西三河の曲者」の意欲
そうした傾向は、西三河地区ではさらに顕著だ。熱心な指導者も多く、指導者たちも情報交換したり、練習試合なども組んだりして交流しながら切磋琢磨しあってきている。そういう中で、西尾東は2018年夏の第100回記念選手権東愛知大会では決勝進出を果たしている。それだけではなく、これまでベスト4も秋季県大会も含めて3度。甲子園を具体的に意識できるところまで来ていた。それに刺激を受けて、西尾もこのところは毎年、好チームを作り上げている。県高野連の理事も務めている西尾の田川誠監督は、「愛知県の中でも、特に西三河地区は公立校が競い合って均衡した力になってきたと思っています」と感じている。 その西三河地区の中でも、近年は実績を上げてきて「西三河の曲者」とも言われている安城の加藤友嗣監督は、いろいろ仕掛けていく野球を得意としている。「私学に比べると、必ずしも能力的には高い子がいるというワケではありません。だけど、それならばそれで、戦い方もあるはずだ」という考え方である。そして、新基準の低反発バットとなった今季は、「さらに仕掛けていく野球を磨いていきます。新基準バットは追い風かもしれません」と、意欲を見せる。 刈谷工科や岡崎工科といった実業校も、スポーツ推薦を導入するなど、積極的に部活動で学校を活性化していこうという姿勢も示している。岡崎工科は毎年11月の連休には関東遠征を組んで、横浜高(神奈川)など、甲子園でも実績のある学校と試合を組むことによってモチベーションを上げている。 知多地区では東浦である程度の実績を作った豊田西出身の中嶋勇喜監督が大府へ異動したことで、新しい風を吹かせそうだ。 大府は2021年夏には現刈谷工科の野田雄仁監督がベスト4まで進出して復活をアピールしている。そして中嶋監督となって、2023年は夏は優勝する愛工大名電に、勝利まであと1死まで迫る大善戦で健在ぶりを示した。さらに秋季大会では知多地区を1位で通過してシード校として出場したが、初戦で中京大中京に競り負けた。しかし、その後の全尾張大会では決勝で誠信を下すなどして優勝。注目の投手もおり、春以降へ向けてさらなる躍進も期待される。