ロシア軍の最新鋭S-500防空システムがATACMSに対抗できそうにない理由
有効性の高い直撃破壊型ミサイルを使える状態にはないもよう
77T6レーダーを備えるS-500が最も高い効果を発揮するのは、これもATACMSのような弾道ミサイルに最適化された迎撃ミサイル「77N6」を使用する場合だろう。77N6はもともと、目標を直撃して破壊する「ヒット・トゥ・キル」方式のミサイルになるはずだった。 ヒット・トゥ・キル・ミサイルとは、弾頭を取り除くことでミサイルを軽量化し、機動性と命中精度を高めたミサイルだ。米陸軍の最新の防空ミサイルの多くはこのタイプになっている(編集注:パトリオット地対空ミサイルシステムのPAC-3ミサイルもこのタイプ)。 だが、軍事ニュースサイトの「ディフェンス・ニュース」によると、ロシアの産業界はヒット・トゥ・キル・ミサイルの生産に必要な精密電子機器の調達に苦労している。S-500の試作機は少なくとも1発の77N6を発射しているが、現在の77N6には弾頭が付いている。つまり、77N6はヒット・トゥ・キル・ミサイルではなく、ロシアが本来想定していたような、弾道ミサイルの迎撃に特化したミサイルではない。 そのため、新たに配備されたらしいS-500は、クリミアの防空システムを追い詰めロシア側が何らかの対処を余儀なくされている当の兵器に対して、あまり役に立ちそうにない。あらためて言うまでもなく、重量1.5t前後の精密誘導ミサイル、ATACMSである。 ウクライナに供与されているATACMSには、広範なエリアに致死的な子弾を数百発ばらまくタイプなどが含まれる。その子弾は、S-400、あるいはS-500のようなデリケートなシステムを無力化することができる。
David Axe