侍ジャパン4番の阪神・森下翔太が、プロ1年目から成績を残せた理由
打率1割から大学4年の打撃改革
高校卒業時にも注目を集めていたがプロ志望届は提出せずに中央大に進学。1年春からいきなり3割を超える打率を残して2本塁打を放つ活躍を見せ、その年の日米大学野球選手権での大学日本代表にも選出された。 ここまで見れば順風満帆のように見えるが、その後の森下の道のりは決して平坦だったわけではない。1年秋からは厳しいマークもあって成績が低迷。2年秋、3年春はいずれも打率1割台に終わっている。 ようやく本来の打撃が戻ってきたように見えたのは4年生になってからだった。 開幕週となった国学院大とのカードではチームは連敗を喫したものの、2試合連続でホームランを放つ。実際にこのシーズンでプレーを見たのは次の青山学院大とのカードの第2戦だったが、この試合でもツーベースを含む2安打1打点の活躍で中軸として十分な活躍を見せたのだ。 当時のノートにもこう書かれている。 「まだ少しスイングの軸がぶれるのは気になるが、振る力とヘッドスピード、打球の速さは大学生全体でも1,2を争うレベル。 厳しいマークのなかでも積極的に振ることができており、昨年までのような迷いが消えたように見える。 (中略) 鋭く左方向に引っ張った後の打席でボールを呼び込んで右中間に持っていくことができたのは対応力が上がった証拠。チャンスの場面でもしっかりボールを見極めて四球を選ぶ。今の状態が維持できれば成績も残りそう」 実際このシーズン、森下はキャリアハイとなる打率.311、3本塁打、11打点という成績を残して1年春以来となる大学日本代表入りも果たすこととなる。 国際大会前の強化試合で死球を受けて右手を骨折し、大会に出場することはできなかったが、この春の活躍が最終的にドラフト1位という高い評価に繋がったことは間違いないだろう。
対応力の進化
そしてプロ入り後も1年目から成績を残しているが、そこにはさらなる進化があるという。当時の他球団の担当スカウトはプロ入り後の森下の打撃についてこう話していた。 「左足の上げ方が小さくなって、追い込まれてからも対応できるようになりましたね。大学の時はあんな“すり足”の動きは見せていなかったです。 元々振る力はありましたけど、あそこまでの対応力があるとは思いませんでした。プロでも結果を残せているのもうなずけますね」 実際プロでの1年目の成績と比べても2年目はすべてにおいて改善しており、16本塁打、73打点はいずれもチームトップの数字だった。それもプロ入り後の進化の証明と言えるだろう。 侍ジャパンの4番として結果を残したことで2025年はさらにファンからの期待が高まることは間違いない。 阪神の中軸を打ち続けることは並大抵のプレッシャーでないことは確かだが、そんな重圧にも打ち勝ってさらに成績を伸ばしてくれることを期待したい。
TEXT=西尾典文 PHOTOGRAPH=西尾典文