「恫喝」訴訟で“敗訴”…石丸伸二前安芸高田市長の「個人責任の追及」は認められる?
安芸高田市が石丸氏個人に「求償」をする可能性
上述の通り、判例に従う限り、石丸氏は個人として損害賠償責任を負うことはない。ただし、国家賠償法上、安芸高田市が損害賠償を支払った場合、石丸氏に「故意または重大な過失」があれば、同市は石丸氏に対し「求償」を行うことができる(国家賠償法1条2項参照)。 三葛弁護士:「石丸氏が『恫喝した』と表現したのは、Y議員の発言に対する評価なので、まず、Y議員が実際に恫喝にあたる発言をしたという事実の有無が問題となります。 本件では、石丸氏はありもしないことをあったと言った、つまりY議員が恫喝にあたる発言をしていないにもかかわらず、その発言があったと言ったと認定されています。 したがって、次に、石丸氏に、Y議員の恫喝発言があったと誤信したことにつき故意または重大な過失が認められるかが問題となります」 本件で、石丸氏に「故意または重大な過失」が認められるか。 三葛弁護士:「『故意』まではわかりませんが、『重大な過失』が認められる可能性は十分に考えられます。 石丸氏には、仮に故意がなかったとしても、少なくとも認識の誤りがあったといえます。したがって、その点が軽過失にとどまるのか、それとも重過失なのかが問題となります。 過失の有無と程度は、一般人を基準に判断されます。 本件では、Y議員が恫喝発言を行ったと主張しているのは石丸氏のみです。また、その他に恫喝発言を裏付ける証拠も認められていません。 つまり、一般人を基準とすれば、その場で恫喝発言が行われたと誤信する余地が乏しかったことを意味します。 にもかかわらず石丸氏は、Y議員の恫喝発言があったと誤信し、その誤信に基づいてY議員の名誉を毀損する発言や投稿を行ってしまったということで、重過失が認められる余地は十分に考えられます」
SNSに投稿する前に「考える時間」があった
三葛弁護士は、石丸氏が議場での発言にとどまらずSNSに投稿したことも、重過失を裏付ける根拠となりうるという。 三葛弁護士:「SNSに投稿する場合には、文章を組み立てるプロセスがあります。 そのときに、自分が認識を誤った可能性はないか、もし投稿を行ったら名誉毀損にあたるのではないか、といったことを十分に吟味できたはずです。 スタッフに相談することもできたはずですし、場合によっては、私のような弁護士に相談することも可能だったはずです。 にもかかわらず、それをせずにSNSへの投稿に及んでしまったことは、重過失を認定する要素となりえます」