マネジメントの父「ピーター・ドラッカー」の驚きの個性派講義…ロサンゼルス郊外の小さな大学で過ごした「奇跡の時間」
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第2回 『「キャリア」や「人生の悩み」について答えが欲しい...近年の「メンターブーム」のウラにある身勝手な矛盾』より続く
夢を叶えるためのMBA
自分の夢を叶えていくために、自分の言葉に説得力を持たせるためには「学問」が必要だと感じたのです。だから人生で初めて真剣に学ぼうと考えました。 渡米して経営学修士(MBA)を取得しようと。数あるプログラムのなかで、私は西海岸のクレアモント大学院大学(CGU)を選びました。 みなさんはこう感じるでしょう。 え? どこ? 最初はランキングの高い、有名なビジネススクールをキャンパスビジットしました。そこは100名超の大教室で聴講するスタイルの授業がほとんどでした。 それまでと違う環境で、それまでとは違う学びをしたかった私としては、大教室での聴講は日本での大学時代とさして変わらないと感じられたのです。大教室なら、居眠りもしやすいし、わからなかったらそのまま逃げることも難しくない。 そこで目に留まったのが、ロサンゼルス(UCLA、南カリフォルニア大学などがある)を訪問した際に少し郊外に存在したCGU。そこは1クラス30名程度の少人数だったのです。ここだと感じました。
マネジメントの父、ピーター・ドラッカーとの出会い
そこで私は、ピーター・ドラッカーと出会います。 日本で経営を、マネジメントを、リーダーシップを学ぶと、必ず出てくる名前、それがピーター・ドラッカーでしょう。 不勉強であった当時の私は、遅ればせながら数々の著書を読みあさりました。 当時、ドラッカー氏はすでに高齢で、しかも2年間のプログラムのなかで、彼の講義を受けるチャンスは1セメスター(学期)のみ。いえ、いまから思えば、直接教えていただける機会に恵まれたこと自体、奇跡なのかもしれません。 ドラッカー氏の講義は、毎週土曜の午前中でした。1クラス30名程度の小さな円形教室に学生が集まっているとドラッカー氏が入ってきます。 教室の中では、誰の手も借りず、ゆっくり、でも自分で歩いて、教室のど真ん中に置かれた椅子に座ります。クッションを腰のあたりに添えて。 用意された目の前のドーナツを口に運び「土曜の午前はここでドーナツを食べるために来ているんだ」なんていうジョークを言いながら、突然、講義に入ります。 まるでつぶやくように、流れるように、一方的に話し続けます。 自分自身のビジネス上の経験、さまざまな会社の話、ケーススタディなどを、一方的に話し続けます。数時間ノンストップで。「いまの話から学べることは7つある」などと言いながら、まるで本でも朗読しているかのようでした。 気を抜くとあっという間に眠気に誘われる。退屈だと感じたら、聞いていられなくなる。そんな空間でした。 ただ、それほど豊かな時間は他になかったのではないかと思えるほど、濃密な時間だったと思います。 いまでもノスタルジックな想いとともに、その景色が生々しく思い浮かびます。ドラッカー氏の話を聞くうちに、ただ、夢中になって耳を傾けている自分がいました。 『最新の経営理論は結局「古典」...アメリカの大学講師が「ビジネスで迷いが生じたら古典に還れ」と語るワケ』へ続く
山川 恭弘