【日本シリーズ2024】ソフトバンク打線を翻弄したDeNAケイの好投 秦真司は戸柱恭孝のリードを絶賛
日本シリーズ第4戦は、DeNAが5対0でソフトバンクを下し、対戦成績を2勝2敗のタイに持ち込んだ。DeNAは4番・タイラー・オースティンのホームランで先制すると、7回には宮崎敏郎のホームラン、桑原将志の二塁打などで4点を奪い勝負を決めた。投げても先発のアンソニー・ケイが7回無失点の好投。第4戦のポイントはどこにあったのか? ヤクルト時代に3度の日本一を経験している秦真司氏に聞いた。 【写真】激戦の「球団チアリーダーオーディション」に潜入取材 【意表をつかれたホークス打線】 ── DeNAが4対0で勝利し、対戦成績を2勝2敗のタイにしました。この試合の勝因を挙げるとすると、どこになりますか。 秦 まずは先発した左腕のケイ投手の好投に尽きます。巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでも好投していたのですが、レギュラーシーズンとはまったく違った投球内容で、それを引き出しているのが捕手の戸柱恭孝選手です。CSに入ってから戸柱選手がものすごく成長しているなと感じます。去年まではアウトコース中心の配球だったのですが、今年はうまくインコースを使うようになりました。この試合でも、左打者へのインコース攻めが有効でした。 ── ソフトバンクはスタメンに左打者を6人並べました。左のケイ投手に対して、左打者を並べてきたということは、ソフトバンクのベンチがそれほど苦にならないだろうという判断をしたということでしょうか。 秦 シーズンの成績を見ると、右打者の被打率.252に対し、左打者は.261。そういうデータもあって、左打者でも苦にすることなく、攻略できるというのがあったと思うんです。その左打者に対して、基本的な攻めは外のストレートとスライダーなのですが、要所でインコースを使う。それがソフトバンクの打者にとってはものすごく厄介なボールになっていました。打者の反応を見ると、おそらくこの攻め方はデータになかったのではないかと。
── ケイ投手は7回を投げて4安打無失点、7奪三振、1四球というすばらしい内容でした。 秦 DeNAベンチとしては、この試合は細かく継投でつなぐというプランがあったと思うんです。それが7回まで引っ張れたのはものすごく大きい。戸柱選手の要求に対して投げ切ったケイ投手が見事だったのですが、ソフトバンク打線にとっては意表をつかれる感じになりました。結局、ケイ投手、坂本裕哉投手、ウェンデルケン投手の3人で済んだ。今後のことも考えると、DeNAにとっては最高の1勝になりました。 ── 今シーズン、DeNAは山本祐大選手がメインでマスクを被り、戸柱選手は控え捕手という立場でした。ただ山本選手がケガで離脱しても、DeNAのチーム力が落ちなかったのは、戸柱選手の存在は大きいと? 秦 去年までとはまったく違うリードをするようになりました。ベンチで見ることが多くなり、いろんな発見があったのではないかと思うんです。投手の調子や打者の反応を見て、リードできるようになりました。もちろん、ベンチからの指示もあると思うのですが、捕手の感性、洞察力がないとここまでうまく引き出せません。第3戦、第4戦に関しては、戸柱選手の存在が大きいですね。 【第5戦の見どころは?】 ── 一方、ソフトバンク先発の石川柊太投手はいかがでしたか。 秦 パワーカーブが特徴の投手ですが、右打者のインコースに食い込んでくるシュート系のボールがいい。右打者への被打率.180を見ても、このインコースへのボールが効いている気がします。この試合でも牧秀悟選手や宮﨑敏郎選手には、インコースを突きながらうまく抑えていました。ただ、4回にオースティン選手にホームランを打たれた場面は、インコース要求に対してやや外寄りに入ってしまった。オースティン選手にとっては絶好球になってしまいました。両チーム無得点で相手打者は4番、一番警戒しないといけないのはホームランなのですが、インコースに投げきれなかった。久しぶりの登板ということもあって、打者に向かっていくというよりは、自身の状態を探りながら投げている印象を受けました。それでも6回途中1失点は立派な数字だと思います。