『東京カウボーイ』井浦新 世界は日本をちゃんと見ている【Actor’s Interview Vol.39】
世界は日本をちゃんと見ている
Q:今回の監督や脚本家は日本に縁がある人ですが、プロデューサーのブリガム・テイラーはバリバリのハリウッド畑です。彼の仕事ぶりはいかがでしたか。 井浦:この作品でのブリガムは、本当に大きな背骨のような存在でした。いつも作品全体を見ていて、毎日現場に来ていました。自分が観たい、作りたい映画のために、プロデューサーとしてお金を集めて回りつつも、彼自身もたくさんお金を出している。現場でどんなシーンが生まれてくるのか毎日楽しみにしていました。『東京カウボーイ』は、ブリガムとマーク監督二人の絶妙なバランスで出来上がっている作品です。 ブリガムは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』で一緒に仕事をしたジョニー・デップのことを、「ジョニーがね」と気軽に言うような大プロデューサーですが、彼はすごい日本映画オタクなんです。昔の日本映画から最近のインディペンデント作品まで、僕も知らないような作品もたくさん知っている。監督のマークも日本映画オタクなのですが、ブリガムはそれ以上でした。そうやってたくさんの日本映画を観てきた中から、僕みたいなのを見つけてくれたんです。 ブリガムは、「僕はたくさんの人に楽しんでもらえる超大作を作っていくことにプライドを持っているし、やりがいも感じている。自分が作りたい、観たい映画もはっきり持っている。とにかく映画が大好きだから、自分が仕事をしたいと思った人と一緒にやっていきたい。今回はそれが君だったから僕は君にオファーしたんだ」と言ってくれた。僕はその言葉に突き動かされて「やらせてください」とお返事しました。ブリガムと出会えたおかげで、「世界はちゃんと日本をみているんだ」と実感することが出来たんです。 井浦新 1974年生まれ、東京都出身。1998年に是枝裕和監督『ワンダルフライフ』で映画初主演。若松孝二監督『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(12)で日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞、ヤン・ヨンヒ監督『かぞくのくに』(12)でブルー・リボン賞助演男優賞を受賞。近年の主な出演作に河瀨直美監督『朝が来る』(20)、かなた狼監督『ニワトリ☆フェニックス』(22)、森井勇佑監督『こちらあみ子』(22)、森達也監督『福田村事件』(23)、今泉力哉監督『アンダーカレント』(23)、穐山茉由監督『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(23)、久保茂昭監督『ゴールデンカムイ』(24)、若き日の若松孝二役を演じた白石和彌監督『止められるか、俺たちを』(18)の続編となる井上淳一監督『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(24)など。また映画館を応援する「MINI THEATER PARK」、アパレルブランド〈ELNEST CREATIVE ACTIVITY〉ディレクター、サステナブル・コスメブランド〈Kruhi〉ファウンダーを務めるなど、その活動は多岐にわたる。 取材・文:香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 撮影:青木一成 『東京カウボーイ』 6月7日(金)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー 配給:マジックアワー
香田史生
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