ラグビーコラム フィジーに完敗しPNC準優勝のエディー・ジャパン 〝秋の陣〟は超速ラグビーの重要なマイルストーン
【ノーサイドの精神】 〝超速ラグビー〟を旗印に掲げる日本代表は、パシフィック・ネーションズ杯（PNC）で準優勝となった。 1次リーグのカナダ、米国、準決勝のサモアからはそれぞれ8トライ、5トライ、6トライと、スコアを稼ぐことができた。WTB長田智希（埼玉）は「6月に集合してから、ずーっと同じことを繰り返してきた」と話す。たとえば、相手キックを受けてからのボールの動かし方など、反復してきたという。アンストラクチャーで〝超速〟を発揮しやすい部分で習熟度が増したことが、トライの数にもつながっているといえる。 世界ランキングは日本が14位で、カナダは21位、米国が19位、サモアは13位（いずれも試合時点）。このあたりのレベルには、このぐらいの点が取れる力が日本にはあるということだ。ただ、決勝の相手、世界10位のフィジーには、ほとんど手も足も出ず、17－41で完敗した。 〝フィジアン・マジック〟の異名をとる通り、相手と当たっても、片手で巧みにパスをつないだり、ときには頭上から真後ろにボールをほうり投げるなど、奔放なつなぎを見せるフィジーを、日本は昔から苦手としていた。加えて、今のフィジーはフィジカルも強い。前半初め、10－3とリードする時間帯もあったが、次第にフィジーが攻撃する時間帯が増えていく。前半は10－10で折り返したものの、後半はSO立川理道主将が「フィジーの一人一人の強さを自分たちが受けてしまった」と話したように、フィジーに4トライを許してしまった。攻撃に回っても、相手の圧力に負けてハンドリングエラーが26度。今年最初のテストマッチだった6月のイングランド代表戦を思い出させるような精度の低さとなった。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ（HC）も「セットプレー、空中戦など、どの部分でもフィジーに勝るところがなかった。悔しいが、現状を確認するためのいい機会だった」と脱帽するしかなかった。 〝超速ラグビー〟は、さまざまなシチュエーションでのボールの動かし方、選手の動き方を想定して組み上げていかねばならず、錬度を上げるのには時間がかかる。エディー・ジャパンの〝秋の陣〟は10月26日のニュージーランド代表戦（日産ス）から始まり、フランス、イングランドに渡って11月にはフランス代表、ウルグアイ代表、イングランド代表と対戦する。
ジョーンズHCは、過去7戦全敗のオールブラックスに対しても「史上初めて勝つ」と強気な姿勢を崩さない。世界ランキング1桁台の相手が続く秋のテストマッチで、どのくらいトライを取り切れるのか。〝超速〟の真価が問われる、2027年W杯4強へ向けた重要なマイルストーンとなる。（田中浩）
