中国がチベットに世界最大級のダム建設決定、「川を武器化」と批判するインドとの対立激化か
中国がチベットに建設する世界最大級のダムが周辺国に波紋を広げている。特に反発を強めているのが、中国がダムを造る川の下流に位置するインドだ。中国が2021年に計画を明らかにしてから、インドは「川を武器化している」と批判しており両国の対立激化は必至だ。 【地図】中国・インド・バングラデシュが水源をめぐり対立か (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー) 中国のチベット自治区で日本時間の1月7日午前10時過ぎ、マグニチュード6.8の地震が発生した。地震が起きた付近では多数の家屋が倒壊し、新華社通信は126人が死亡したと伝えている。 習近平国家主席は救助活動を全力で展開し、死者数を減らすように指示しているが、厳しい寒さが続いており、犠牲者がさらに増えることが懸念されている。 新年早々、中国内陸部に世界の注目が集まった形だが、2024年末にも周辺国に影響が及ぶ重要な決定がなされていた。 新華社は12月25日「中国政府はチベット自治区を流れるヤルンツァンポ川に世界最大級の水力発電ダムを建設する計画を承認した」と報じた。二酸化炭素の排出量削減目標において大きな役割を果たし、チベットでの雇用を創出することが主な狙いだという。 新華社はダムの建設場所や建設の開始時期、事業の規模について言及していないが、承認された水力発電所の能力は年間3000億kWhだと言われている。中国が世界に誇る三峡ダムの3倍のスケールだ。 資金の規模も三峡ダム(約2542億元)の約4倍になる見込みだ。中国政府は2023年に「ダム建設費用は1兆元(約21兆6000億円)に上る」との試算を発表している。 三峡ダム建設では140万人が移転を余儀なくされたが、中国政府は今回の建設に伴う周辺住民への影響について情報を明らかにしていない。チベット人が神聖視している地域の生態系が乱されるリスクもある。 ダムの建設計画は2021年3月に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で既に発表されていたが、その実施は延び延びになっていた。 建設費の大きさなどに加え、過去70年で膨大な数のダムを全土に建設してきた中国政府にとっても今回の建設計画のハードルが高かったからだ。 ダム建設には重機が欠かせないが、建設場所は奥地にあるため、その搬入が極めて困難だ。7日の地震が示すとおり、この地域は地震活動が活発であり、過去に大きな地震が何度も起きている。ダムの建設には少なくとも10年はかかると言われている。