GDPは時代遅れ。地球環境のノーベル賞「ブループラネット賞」受賞者が語ったこと
GDP(国内総生産)ではもはや「経済」を捉えきれない。 地球環境問題のノーベル賞とも言われる「ブループラネット賞(地球環境国際賞)」の受賞者が、GDPという経済指標が引き起こす問題に警鐘を鳴らした。 【全画像をみる】GDPは時代遅れ。地球環境のノーベル賞「ブループラネット賞」受賞者が語ったこと ブループラネット賞は、現在の世界的な気候変動対策の流れをつくった「地球サミット(国連環境開発会議)」開催年の1992年、旭硝子財団が創設した。環境問題に詳しい国内外の研究者や学識者、行政関係者、ジャーナリストらが、社会科学、自然科学/技術、応用の分野で著しい貢献をした個人・組織を推薦、その中から毎年2件の受賞者が決まる。 2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士はブループラネット賞の初代受賞者でもあるなど、地球環境問題の解決を先進的かつ継続的に後押しする国際賞として知られている。 33回目を迎えた今回は、国内503人、海外847人から39カ国142件の候補者が推薦され、最終的に、イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのロバート・コスタンザ教授と、国際的な科学者組織「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」が受賞。10月22日、受賞者の記者会見が行われた。
GDP以外の新たな指標が必要
コスタンザ教授は1997年、水の供給、気候の調節、景観、受粉など、自然が人間にもたらす恩恵「生態系サービス」の経済的価値を世界で初めて体系的に試算。その額が当時の世界GDP総額を上回っていることを実証した。 科学雑誌『Nature』で発表したその論文は世界的な注目を集め、それまで過小評価されてきた生態系サービスの価値を世に知らしめた。 コスタンザ教授は会見で、「多くの問題は社会資本の喪失あるいは社会の分断から起きている」と指摘。 「生物多様性や気候変動問題は、複数の危機が複雑に絡み合ったポリクライシスだ。でも、現状のGDPは社会のウェルビーイングの指標としては設計されておらず、その狭い指標の範囲ではもはや重要なことに目が向けられない。 GDP以外で、持続可能なウェルビーイング、例えば自然資本や生態系のエコシステムあるいは社会資本といった幅広い指標が必要」(コスタンザ教授) と語り、GDPで経済を捉える考え方そのものが問題をより深刻化させていると警鐘を鳴らした。