アルミ圧延品、乗用車向け再び増加基調。初の上期出荷10万トン超・コロナ前水準2割上回る
自動車向けアルミ圧延品出荷量が回復している。半導体や部品不足の解消による自動車生産台数の回復に加え、アルミパネル採用車の増加が出荷増を後押しした。2023年度上期の乗用車向けアルミ圧延品(板・押出合計)出荷量は、半期では初となる10万トン超えを記録。コロナ前の19年比でも2割上回る水準となり、再び増加基調を示している。 アルミ板や押出製品といったアルミ圧延品は、配管などの内部部品やルーフレールといった構造材など多様な部品の素材として活用されている。また、近年ではボンネットやドアといった外板部分のほか、リチウムイオン電池の筐体などとしての採用も広がっている。 自動車向け出荷量は、コロナ前までは車体軽量化を目的としてボンネットなどを鉄からアルミに切り替える動きが散見。高級車やハイブリット車、電気自動車を中心にアルミパネル出荷が増えた。しかしコロナ禍による自動車生産の混乱により、アルミパネルなど圧延品の出荷量も不安定な動きとなっていた。 その後、23年度に入ってからは、半導体や部品不足が解消に向かい、自動車大手の生産も安定化。売れ筋車種を中心に挽回生産に入っている。この挽回生産車種にアルミが多く利用されているもようだ。 23年度上期の乗用車向けアルミ圧延品出荷量(熱交換器向け除く)は、板製品が前年同期比33%増の6万4850トン、押出製品も同23%増の3万5685トンだった。合計では10万535トンとなり、年度上期として初めて10万トンの大台を突破した。コロナ前の19年度上期との比較では、押出製品が横ばいだった一方で、板製品が4割増と大きく増えた。 今年度上期の自動車向けアルミ出荷量の増加について「自動車大手が過去の減産分を解消するために生産を増やしていることが主な要因。それに加えて、高級車を中心にアルミパネルの採用が増えている。今後の開発案件も見えてきており、中長期的にアルミ採用車が増えていく方向にある」(アルミ圧延大手幹部)との声がある。 アルミパネルを採用するのは高級車やEVなどが中心だが、最近ではSUVなどでの使用案件も出てきている。自動車生産の安定化に伴い、今後自動車用アルミ圧延品の出荷が再び増加基調に向かう可能性が高まっている。