新幹線「のぞみ」自由席が減って割を食うのは誰 3両から2両に、全車指定席の列車も
指定席化が進む現在の新幹線・特急の問題点
しかし近年では、JR東日本を中心に、新幹線・特急の指定席化を進めている。確実に座れることがサービスであると考えるようになり、いっぽうで指定席のみにすることで増収をめざす考えもある。また、自由席の場合には車内で自由席特急券を買う人も多く、そのために車掌を多く乗務させなければならないという問題が発生した。 そういった課題を解決するために、新幹線・特急の指定席を増やす、あるいは全車指定席にするようになっていった。 必ず座れる、という乗客側のメリットは大きい。また、乗務員を減らせる鉄道会社側のメリットもある。いいことずくめのような気はする。 いまでは、改札を通ったらその列車の指定席にどれだけの人が乗るかはわかるようになっている。そのことで指定席では検札がなくなった。 自由席が主体の列車は、満員になることがほとんどない地方部の在来線特急列車や、通勤客の多い新幹線列車くらいになっている。 では新幹線・特急の指定席が増えることで、誰が割を食うのか?
通勤に新幹線・特急を使う人がいる
新幹線や在来線特急の定期券というのがある。新幹線に定期券があるのはよく知られているが、在来線特急の定期券も、実は存在する。JR北海道やJR西日本、JR四国、JR九州にある。 これについては、指定席の増加、あるいは全車指定席で困っているケースも発生している。JR北海道では、指定席のみの列車しか走っていないところで、特急定期券「かよエール+」を発売している。普通車指定席の空席を利用できることになっている。利用3日前から指定席予約も可能だが、ちょっと手間がかかるようになっている。 新幹線でも、同様のケースがある。東北新幹線の盛岡以北、北海道新幹線では全車指定席の新幹線ばかりである。このエリアでは空席に座ることにしている。 幸い、これらのエリアはふだんから混雑していないから問題が起こらないのが現状だ。 しかし東海道・山陽新幹線「のぞみ」のように、ふだんから混雑している列車の自由席が減ることで割を食う人もいるのだ。 「EXサービスで座れるからいいじゃない」という人がいるかもしれない。しかし山陽新幹線では、「のぞみ」の停車駅を細かく変えることで、地域内の利用にも便利なようにしている。また東海道新幹線では、名古屋~京都間などの通勤・通学といった需要もある。また意外なことに、新横浜~品川・東京という通勤もあるのだ。たとえばJR東海で働く人たちである。 長距離の需要ではなく、細かな需要には自由席でないと応えられないという問題がある。そういう人たちが割を食うのだ。混雑が目立つ「のぞみ」で自由席削減とするから、大きく話題になるといえる。(小林拓矢) 筆者プロフィール こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。