「自分らしさ」という言葉に悩まされた――日向坂46の「笑顔の太陽」丹生明里が乗り越えた自信のなさ
自分をカッコよく見せるのは違う
たくさんの人を笑顔に……その思いは7月発売の初の写真集『やさしい関係』(幻冬舎)に形として表れている。日向坂46のメンバーとしては5人目となるソロ写真集のリリースだ。 制作の話を聞いたときは喜び以上に「自分なんかが出していいんですか?」と、戸惑いを覚えたという。後ろ向きな気持ちを救ったのは、「丹生明里の大ファン」を自称する同期の宮田愛萌の言葉だった。 「『人生で一番キラキラしている瞬間を、写真集という形で世に残せるってすごいことだよ』と言ってもらえたとき、『そうだよね、みんなができる体験ではないんだよね。感謝の気持ちを持たねばなあ』と、前向きになりました」
撮影で唯一戸惑いを覚えたのは、囲炉裏の前で毛糸のパンツをはく瞬間だった。 「私、冬になるとよく毛糸のパンツで温めてもらっているんです。ただ、『普段の私をそのまま写真にしていいのかな?』って。こういう普通の姿、坂道の写真集ではなかなか見られないと思うので」 坂道グループメンバーの諸作にある「オシャレな空気感」は、『やさしい関係』の中にはないかもしれないと笑う。それでも「自分をカッコよく見せるのは違う」という思いがあった。毛糸のパンツは丹生なりの「攻め」だそうだ。 「写真集というと、今まで自分の見せたことがない部分を出したいという側面もありますよね。けど私はいろんな自分になるより、普段の自分を見てほしいという気持ちが強かったんです」 写真集制作にあたり丹生は「超裏テーマ」を設けたという。「裏だから、言わないほうがいいかな?」と、しばらく逡巡した後、「言っちゃいます」と、いたずらっぽく笑い、口にした。 「『みんなの孫』。どこか親近感があって、読むとほっこりした気持ちになっていただける一冊になれたらいいなあって」
「自分のために」は、何か違う
今、丹生は大きな夢を抱いている。 「『天気の子』の主人公が『陽菜!』と名前を叫ぶシーンに、すごく心をつかまれたんです。名前を叫ぶ、そのシンプルな一瞬で感動させる、この声の演技のすごさに心震えてしまったんです」 自分が声の演技で受けた感動を、今度は自分の演技で返したいという。ここでも丹生の夢とその歩みのなかで得る喜びは人の幸せとつながっている。正直、我欲はないのだろうか? 「決して欲がないわけではないんです。けど……『自分のために』というのはなんか違うんですよね。やっぱ誰かの役に立ち続けられたらいいなって。それがかなえば何も悔いはありません」