トランプ氏、プーチン氏に「今こそ行動を起こす時だ」…再侵略防ぐ「安全の保証」には触れず
【パリ=阿部真司、酒井圭吾】米国のトランプ次期大統領は7日午後(日本時間8日未明)、訪問先のパリの仏大統領府で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領と会談した。ロシアの侵略終結に向けた和平交渉などについて協議したとみられる。
トランプ氏がゼレンスキー氏と対面で会談するのは11月の米大統領選後初めて。会談はマクロン氏が仲介し、ノートルダム大聖堂の修復完了を記念する式典に先立ち行われた。
ウクライナ大統領府によると、会談ではウクライナ支援や平和の確立を巡り意見を交わした。ゼレンスキー氏は「我々全員にとって公正な平和」が重要だと述べ、ウクライナ側が一方的な譲歩を強いられないよう要望した。停戦合意後にロシアが合意に反して再侵略する可能性にも言及し、「最も重要なのは、ウクライナへの強力な安全の保証だ」と訴えた。北大西洋条約機構(NATO)加盟を念頭に置いた発言とみられる。
トランプ氏は8日、自身のSNSで、ロシアとウクライナ双方で多数の犠牲者が出ていることに触れ、「あまりにも多くの命が不必要に浪費された。直ちに停戦し、交渉を始めるべきだ」と強調した。プーチン露大統領には「今こそ行動を起こす時だ」と呼びかけ、かねて主張する戦闘の早期終結を改めて訴えた。
一方、トランプ氏は、ゼレンスキー氏が求めるロシアの再侵略を防ぐための「安全の保証」には触れなかった。トランプ氏は軍事支援を続けてきたバイデン政権からの方針転換を掲げ、次期政権ではウクライナ特使のポストを新設して元陸軍中将のキース・ケロッグ氏を起用する。ケロッグ氏はウクライナによるNATOの早期加盟に否定的だ。
会談を終えたトランプ、ゼレンスキー両氏は7日夕、マクロン氏とともに記者団の前に姿を現し、3氏は互いの肩をたたきながら声をかけ合った。マクロン氏はX(旧ツイッター)で会談を「歴史的」と強調したが、トランプ氏とゼレンスキー氏の意見の隔たりはなお大きいとみられ、和平交渉に至る道筋は見えていない。