誰でもウェルカム「幸せを目指す人」のオンラインサロンのはずが…追い出された危険分子
人物評価はそれぞれの立場で変わるもの
『怖いトモダチ』(岡部えつ 原作・やまもとりえ 漫画 / KADOKAWA)は、「いい人」なのか、「悪魔」なのか、証言者の立場によって評価が大きく分かれる、ある人物をめぐる漫画である。 その人物とは、人気エッセイスト・中井ルミン。主宰するオンラインサロンには、彼女を慕うメンバーが集い、中には熱烈なファンや崇拝する信者もいる。 【漫画を読む】「誰でもウェルカム」サロンで…「辞めさせられた」彼女は何をしたのか ルミンの主宰する「ルミンの小部屋」は、「みんなで幸せになろう」を合言葉に始まった。「人とつながりたい」という気持ちだけで始め、集まってくれた十数人のメンバーと何時間も話し合っているうちに、「気がつけば4桁の人が会員となって」いた。 ルミンの主張によれば、それぞれに個性があって、相性のいい悪いがあっても、たとえ考え方や正義の定義に違いがあっても、話し合うことで「みんなの脳が言葉でつながって、伝達し合い、ごろごろ動き始め、しだいに同じリズムを刻むようになり」やがて一体化して同じ方向に向かう、のだと。 「中井ルミンのオンラインサロンは、いつでも誰でもウェルカムです」なのだ。
サロンを追放された人物は何をしたのか
だがサロンのメンバーは、過去に「辞めたっていうか、辞めさせられた」メンバーがいたと話す。大石キラリというその人物は、「ルミンは悪魔だ」「あいつは私の作品をパクったんだ」と訴えのだという。 大石キラリはサロンを辞め、ルミンはメンバー全員に「彼女を責めないでください。好意が少し行きすぎただけ。私は少し傷つきましたが、歩みを止める気はありません」と一斉メール送った。 ルミンがかわいそう、ルミンはすごい、ルミンは優しい。メンバーたちはそう結論付ける。 1話、2話ではルミンを賛美するサロンのメンバーがルミンを信条するきっかけとなったエピソードを紹介した。 だが「いつでも誰でもウェルカム」なオンラインサロンを大石きらりが「辞めさせられた」のだとしたら、ルミンの「いつでも誰でも」は真実ではないと言えるだろう。 問題があり、考え方や正義が違う相手と、議題を通して話し合い、同じゴールを目指すのではなかったのか。 大石キラリの主張がルミンの誹謗中傷だというのなら、なにがそう思わせた原因となったのか、聞くべきではなかったか。 だがルミンは何がきらりを追い詰めたのか、原因を問い質すことも真相を調べることもなく、1通のメールで幕引きを図った。 そんなルミンに違和感を持たないサロンのメンバーたち。 あなたならどう感じるか、以下、『怖いトモダチ』の漫画試し読みでぜひお考えいただきたい。 ◇続く第4話「普段は上の立場の『私』を鼻で笑い自分の有能ぶりを語る彼女が『マウント』する理由」では、大石キラリらしき人物との顛末をルミンが語る。 ルミンが体験したと言う「マウント」とは。 ---------- 人気エッセイスト 中川ルミン主宰のオンラインサロンには、彼女を慕う大勢のファンが集う。子どもの学校の悩み、受験、親戚との確執、親身に悩みに寄り添うルミンは「いい人」そのもの。だがルミンの素顔には謎がある。 高校時代のルミンの記憶は真実なのか。ルミンをめぐるさまざまな人の思惑と言い分が交錯するミステリーコミックエッセイ『怖いトモダチ』(岡部えつ 原作・やまもとりえ 漫画 / KADOKAWA)。 ----------
岡部 えつ/やまもと りえ/FRaU マンガ部