「殴っても、命を奪ってもおかしくなかった」27歳で父の認知症に向き合ったハリー杉山「発症しても人生は終わらない」と悟って
■「誰にだって起こりうる」認知症は共存すべき存在 ── ハリーさんは「認知症と向き合う」という表現をされています。とても印象的ですが、なぜこの言い方をしているのでしょうか? ハリーさん:僕のこだわりです。「認知症になる」というと、当事者の方のすべてが「認知症という存在」に変わり、人格も別人になってしまう、ネガティブなイメージがある気がしています。でも「認知症と向き合う」と言えば、当事者の方は変わらずに存在し、認知症と接しているイメージになるのではないでしょうか。僕自身も、大切な人たちも、いずれ認知症と診断されるかもしれない。そのときに「認知症と向き合う」という表現をしたほうがショックはやわらぐし、当事者の方の尊厳も大切にされるのではないかと感じます。
とはいえ、いまだに「認知症=人生が終わる」「24時間支援を受けないと生きていけない」と考えている人は少なくないかもしれません。でも、父を見ていて認知症と向き合うようになっても、人生は続くし、生きがいだって得られると思うようになりました。実際、サポートは必要かもしれないけれど、人によっては仕事を続ける人もいらっしゃいます。僕は人生のたそがれどきに、認知症と向き合うときが訪れるのはごく自然のことだと考えているんです。だから、認知症という病を「忌むべきもの」とするのではなく、「共存するもの」と、社会全体でイメージを変えていけたらと思っています。そのために、僕は自分の経験を自分の言葉で伝えていきたいと考えています。
PROFILE ハリー杉山さん はりー・すぎやま。タレント。2008年スペースシャワーTVのMCとして芸能活動をスタート。 日本語、英語、中国語、フランス語の4か国語を操る卓越した語学力を持ち、 2011年よりJ-WAVEのナビゲーター、2012年よりCX「ノンストップ!」等、司会、リポーター、モデル、俳優などマルチに活躍中。2012年にイギリス人ジャーナリストの父がパーキンソン病、認知症と診断された。
取材・文/齋田多恵 写真提供/ハリー杉山
齋田 多恵