CVTにDCT、AMT……ミッションは何種類ある?
■発進デバイスの種類
これまで述べてきたように、トランスミッションは速度調整のために、エンジンと駆動輪の減速比を常に最適に切り替えることが一番重要な仕事だが、実はそれだけではない。前述の概要のところでも少し触れたが、トランスミッションとは発進デバイス+変速機のことだ。つまり理屈で言えば「発進デバイスの種類×変速機」の数だけトランスミッションの種類があることになる。現実的には遊星ギヤを使うステップATの様に、事実上トルコンとの組み合わせしかないものもあるし、そのほかでも組み合わせはほぼ主流となるものが決まっている。 発進デバイスを使って、クルマを静止状態から発進させることがトランスミッションの重要な仕事の一つだと考えると、その性能もきちんとチェックしなくてはならない。 現在普通の乗用車に使われている発進デバイスは3種類ある。マニュアルトランスミッションやAMT、DCTに使われているのは「摩擦板式」、ステップATやCVTに使われている「トルコン」、そしてDCTやCVTの一部に使われている「モーター式」だ。
(a)摩擦板方式 二つの円盤を圧着させることで断続を行う方式。マニュアルの場合、通常、平ばねの力で圧着されており、クラッチを切るときにはワイヤーや油圧の力で摩擦板を離して動力を切断する。普通の乗用車に使われているのは、この摩擦板がエンジンのフライホイールと擦れる単式乾板式だ。レース用などに使われるものの中には、大トルクに対応するために摩擦板を増やしたものもある。 DCTでは、システム的な故障によって切り替え式のクラッチ両方に同時にトルクが流れると重大なトラブルになるので、それを防ぐため、平常時はクラッチが切れた状態になっており、動力を伝える時だけ油圧でクラッチを圧着する。DCTの場合、クラッチは「乾式(かんしき)」、「湿式(しつしき)」の両方がある。オイルに浸される湿式は切断時にも引きずり抵抗が発生するのがロスに繋がるが、半クラッチの温度変化に比較的強く、またオイルの粘性が変速時のショックを和らげる場合もあり一長一短だ。 摩擦板方式は、トルクの伝達がON/OFFの切り替えになりやすく、洗練されたものになり難い。そこを半クラッチで滑らせて、できる限り穏やかに繋ぐのだが、マニュアルならドライバーの技量に、DCTならプログラムの制御によってその洗練度が決まる。