CVTにDCT、AMT……ミッションは何種類ある?
そのため、自動車と同様のレシプロエンジンを使う船舶や飛行機では、原則的にエンジンは最も総合効率の良い一定速度で回し、速度調整はプロペラの捻れ角(ピッチ)を変えて行う技術が発達した。この可変ピッチプロペラは飛行機なら戦前から、船舶でも50年以上前に登場している。特に燃料消費を重視する用途の船舶では、エンジンの回転は常時一定が当たり前になっているのだ。 しかしクルマとバイクは、加減速時にアクセル操作によってエンジン回転を変えるというレシプロエンジンとしては異例なインターフェイスになっている。そんな無理は全ての走行条件では通用しない。そんな方式を実用化するためには、エンジン回転の調整幅でまかない切れない分を変速機で補ってやる必要がある。実用化だけの問題ならそれで済んだが、さらに燃料消費率を抑えたいという欲を言えば、船舶同様、エンジン回転数を固定して効率の良いところだけで使ってやりたくなるわけだ。
■トランスミッションの種類
現在、乗用車に使われているトランスミッションはざっくり5種類ある。細かく分けるとキリが無いのでその大まかな5種類についてまずは概要と簡単な原理を説明してみたい。 (1)マニュアルトランスミッション 古くからある手動式のトランスミッションで、エンジンの回転を多数の平歯車で減速する。ギヤの選択はドライバーがシフトレバーで行い、発進と変速時にはクラッチペダルを操作する。発進デバイスはクラッチによる摩擦板方式だ。 (2)トルコンステップAT 遊星歯車のセットを使ってエンジンからの回転を減速する。ギヤは電子制御によって自動的に選択され、切り替え操作はプログラムが出した指示に従って、遊星歯車に組み込まれたクラッチを油圧でつなぎ変える。発進デバイスはトルクコンバーターが用いられる。 (3)CVT 二つのプーリーの有効径を変えてエンジンからの回転を減速する。二つのプーリーはベルトがかかる谷間がV字構造になっており、油圧でV字の谷間を狭めたり広げたりすることで、ベルトの掛る位置が変わり有効径が変わる。発進デバイスは、こちらも現在はトルクコンバーターが主流だ。 (4)AMT マニュアルトランスミッションを油圧または空気圧アクチュエーターで動かす変速機だ。当然、平歯車を使ってエンジンからの回転を減速する。変速機の仕組みそのものはマニュアルのままで、人間がクラッチを踏んだり、ギヤレバーを操作していた部分をアクチュエーターに代行させる。マニュアル同様、摩擦式の発進デバイスが使われる。 (5)DCT 構造的にはAMTの仲間。これも当然、平歯車を使ってエンジンからの回転を減速する。奇数段のトランスミッションと偶数段の二つのトランスミッションを持ち、二つのクラッチで接続先を切り替える。主に摩擦式発進デバイスが使われるが、最近ではトルコンを使うものが出てきた。