なぜ人は「貨物列車に乗りたい」のか…医療ジャーナリストが貨物列車の添乗記を執筆した意外な訳
40年経って…子どもの頃の原風景を取材することに
乗り鉄、撮り鉄など、細分化している鉄道ファン。しかし、そうした鉄道ファン向けの様々な本と一線を画した本が登場した。 【画像・全7枚】すごい! 青函トンネルの内部は…? 必見の画像満載! 『貨物列車で行こう!』(文藝春秋)を著したのは、医療ジャーナリストの長田昭ニさん。なぜこの本を? 「僕はいわゆる“鉄オタ”じゃないんです。ただ、子供の頃から地図を見るのが好きで、鉄道の路線図を見ていると、乗ったことがある路線もあれば乗ったことない路線もあって、乗ったことのないものに乗りたいと思うじゃないですか。 それで、周りの大人に、『これはどうすれば乗れるの?』のと聞くと、『貨物線だから乗れないんだよ』と言われて、貨物列車に興味を持つようになったんです」 当時、横浜に住んでいた長田さんは、放課後に自転車で港湾部の貨物線や貨物列車を見にいっていたと振り返る。 「寂しいんですね、雰囲気が。線路も旅客線と違って草ぼうぼうで、こんな寂れているところに本当に列車が走ってくるのかなと思っていると、遠くから突然やってきて感動するわけですよ」 そうした原風景である貨物列車と本格的に「再会」を果たしたのは、50歳を過ぎてから。 編集者から「いつも医療で頑張ってもらっているから、たまには好きなテーマについて書いてみませんか」と月刊『文藝春秋』で様々な執筆者が東京の昔からある風景を取材する連載「50年後の『ずばり東京』」(’16年8月号~’19年1月号/後に『平成の東京 12の貌』として新書に)での執筆を提案された。そこで真っ先に思い浮かんだのが、貨物駅だったのだ。 「東京には2つの大きな貨物専用駅があって、1つは品川にある東京貨物ターミナル駅、もう1つが 南千住にある隅田川駅で、古いほうの隅田川駅を取材してみたいと言うと、事情を知らない編集者は軽い気持ちで『どうせなら貨物列車に乗せてもらったら?』と言うんです。 僕は、乗せてもらえるわけないじゃないと思いながらも、JR貨物に取材依頼し、ダメもとで添乗もお願いしてみたら、本社に打ち合わせに呼ばれた。そこで子供の頃からの貨物列車への熱い思いを話したら、真剣に聞いてくれてOKになったんです」 ◆思いがけない反響、取材を通してわかった「貨物鉄道の重要性」 記事が文春オンラインに掲載されると、思いがけない反響があった。知らなかっただけで、実は貨物列車ファンはたくさんいることがわかり、好評を受けて記事は2回、3回と続き、書籍になったと言う。