なぜ人は「貨物列車に乗りたい」のか…医療ジャーナリストが貨物列車の添乗記を執筆した意外な訳
津軽海峡線では新幹線の線路を走る専用機関車もあると言う。 「新幹線はスピードが速すぎて信号機が見えないので、運転席に信号が出るんです。貨物列車も新幹線の線路を走る際には、乗り入れる手前で止まり、運転士がいろんなスイッチを切り替え、新幹線仕様にして走って、在来線に降りたら元に戻すというハイブリッドな運転をしています」 ちなみに、走行距離が1番長い列車は札幌貨物ターミナル駅から福岡貨物ターミナル駅に向かう列車で、約43時間かけて走っている。こうした長距離列車は「ちょい乗り」の荷物が多いため、途中駅でコンテナの上げ下ろしを幾度もするが、そこで活躍するのが各駅で待機するフォークリフトだ。 「人間は駅に着けば自分で乗り換えてくれるけど、貨物はフォークリフトで動かしてあげなければいけない。ダイヤに合わせて決まった時刻に下ろし、所定の場所に戻して、また別の場所にあるコンテナを載せていくその作業を安全かつ確実に進めていくフォークリフトの操縦士のテクニックがすごい。コンテナを抜いた場所に次のコンテナを入れる。しかも、両隣のコンテナとの間、拳1個分しか空いていないようなスペースに差し込むこともある。 何台ものフォークリフトが機能的に動き回る光景は、マスゲームを見ているみたいで感動的ですよ。貨物列車や貨物駅には、いろんなプロの仕事があることを知ってほしい」 隠れたファンの多い貨物列車だが、類書には写真集や、もともと荷主のために作られ、マニアの間で人気の『貨物時刻表』がある程度。今回の本をどんな人にどう読んで欲しいか聞くと、長田さんは言った。 「この本はおそらく世界で初めての貨物列車の紀行文なんです。僕は子供の頃から内田百閒とか宮脇俊三などの鉄道紀行文が好きで、それを貨物列車から見た風景で書きたかったんです。 だから、もちろん鉄道マニアの方々にも読んでもらいたいですが、旅好きの人に読んでもらいたい。今までになかった紀行文として楽しんでもらえるんじゃないかと思います」 取材・文:田幸和歌子
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