皇室に「婚姻の自由」はあるのか――長期化している結婚問題と皇室制度の課題
「また、もう一つ、現在の内親王は『潜在的な皇位継承資格者である』という可能性以上に、『摂政の就任資格』もあります。皇室典範第17条によると、摂政の就任順位は1位が皇太子または皇太孫で、内親王は6位となっています。摂政に就任することが何を意味するかというと、『象徴職の代行』になりうるということです。それゆえ、例えば勝手に海外で独自の外交ルートを開拓したり、特定の政治団体と結びついたり、ということがあっては困るわけです」 「皇室の方々には一般国民に与えられている自由や権利が制限されているため、一見すると人権侵害ではないかと思われるでしょう。このような『憲法の一般原則に違反してでも、この制度は保障する』と憲法自体が定めることを『制度的保障』というのですが、天皇制はその典型例だとされています。皇族については『男女平等』『法の下の平等』『婚姻における当事者意思の尊重』など基本的人権の条項を適用しないという説明になり、それを前提として皇室典範があるのです。これを『身分制の飛び地』と呼ぶ憲法学者もいます。現行法が女性皇族の婚姻を自由にしているのも、憲法24条が適用されるからではなく、あくまで現在の皇室典範が男系男子世襲の原則を採用しているため、規制の必要がないと考えられたからにすぎません」 こうした「潜在的な」可能性を脇に置き、周囲の理解を得られなくとも、眞子さまが意思を強くすれば、皇籍を離脱、結婚をすることもできる。だが、その場合、従来の慣例と異なるため、その後の環境に変化があるかもしれないと木村さんは言う。
国民の「象徴」として機能するか
「憲法第1条に天皇は『国民統合の象徴』で『国民の総意に基く』とあります。象徴という立場は、与えられた権限を行使すればいいというのとは違います。その人を見ると、多くの人が日本を思い浮かべるという存在。ということは、多くの国民が『この方は象徴だ』と承認していないと機能しないのです。もしそのときに『この人の親族にこんな人がいる』『国民として恥ずかしい』と思われてしまうと、象徴という立場が成立しない、あるいは存在意義が弱まる可能性がある。現状の皇室制度では、眞子さまの弟の悠仁さまが即位される可能性が高いと思いますが、その時にいまのような国民感情だと、象徴という立場がどういう受け入れられ方になるのか、ちょっと心配になります」 「結婚した女性皇族に皇室活動を続けてもらう『皇女』制度の創設が、政府内で検討されています。これは『象徴天皇としての公務』があまりに増えすぎているからです。天皇だけではこなせずに、『象徴としての仕事を皇族全体で分担している』という状態になっています。そのため、皇族の数が一定数必要になっているのです」 「そもそも皇族の公務は法的根拠が曖昧なまま、どんどん増えて膨大な数になっている。『公務が多すぎるから、象徴職を分担せざるをえない』という事態に法律が対応していないというところに本質的な問題があるのではないかと思います。眞子さまの結婚問題だけにとらわれず、『皇室の公務』のあり方という課題について考え直すべきだと思います」