輪島塗の継承 繁栄願う 漆芸美術館、元日から活気
輪島市の産業と文化の中核である輪島塗を発信する石川県輪島漆芸美術館は1日から開館し、多くの市民らが鑑賞した。輪島塗の販売額がピークの1割ほどに落ち込む中、地震で若手職人の離職が相次ぎ、生産体制は大きなダメージを受けた。来場者は苦境に直面する伝統工芸の魅力に触れ、堅牢(けんろう)で優美な漆器の継承を願った。 漆芸美術館は例年、元日から来場者を受け入れており、今年もコレクション展や福袋「復興祈念バリューパック」を目当てに午前から来場者が詰め掛けた。 輪島塗を扱う塗師屋「輪島屋善仁」で働く山口恵理さん(31)は「今まで築いてきた輪島塗の文化を残したいとあらためて感じた」と語った。夫の転勤で昨年輪島市に引っ越した名古屋市出身の岡小知(さち)さん(57)は「輪島塗は全国でも有名。日常的に使える器などがあれば手に取る人が増えると思う」と提案した。 地震によって被災地を応援しようと、漆器の注文は昨年、おおむね好調だった。しかし、作業場の損傷など地震の影響で生産体制は崩れ、受注できないケースが出ているという。 輪島漆器商工業協同組合の日南尚之理事長は、事務所と作業所、倉庫の3棟全ての公費解体を申請した。再建の見通しは立たず、「商品の保管場所がないから、製造用の機械を買うこともできない」と頭を悩ませる。市内に仮設工房が建設されたものの、漆塗りに重要な温度や湿度の調整に手間取る職人もいるという。避難や転職で輪島を離れた若手職人も少なくない。 こうした事態を受け、石川県と北國新聞社などが復興策について協議し、輪島塗の新たな人材養成施設を設けることが固まった。 昨年、沈金人間国宝に認定された西勝廣さん(69)は「養成施設によって人材育成と技術の継承が前進する」と歓迎。その上で「日本一の漆器産地を今後も守っていきたい」と力を込めた。