道の駅にある「農家の梅干し」が絶滅する日…日本各地の梅産地や梅文化が消滅の危機に
「漬物」製造が許可制に…手作りの漬物の販売が難しくなる…
今、漬物業界が危機に瀕している。食品衛生法改正に伴い、漬物製造が許可制となり、衛生基準を満たす施設などが必要になったことで、これまで全国各地の道の駅などに出品されてきた農家の人が自宅や作業場などで仕込んでいた手作り漬物の販売が難しくなるのだ。 【悲惨!】校庭やゴルフ場をサツマイモ畑に…農水省が”本気”で考えている「芋」中心の食生活 改正法は’21年に施行。今年6月1日には経過措置期間の3年を終え、全面実施になる。 このニュースでは、廃業を決めた農家をはじめ、悲痛な声が多く取り上げられていたが、何か手立てがないのか。そう思っていたところ、1月11日にX(旧Twitter)で見つけたのが、以下の投稿だった。 「漬物製造業許可を既に取得している/新たに取得できる場合は、もちろん販売を続けられます。しかし、漬ける設備について色々と定めがあるため、個人で自宅で漬けてたような方にとっては費用負担も多く、ハードルが高いものになります。梅ボーイズは4000万円かけて新製造所を建てました」 これは、和歌山県日高郡みなべ町の「梅ボーイズ」のリーダー、山本将志郎さんによるつぶやきだ。 ◆大学院を中退し、「塩と紫蘇」で漬ける昔ながらの梅干しの研究を開始 山本さんは5代続く梅農家で育ち、北大薬学部で研究をしていたが、農園を継いだ長男が「梅を栽培した後は、どの梅も甘い調味液で均一な味になるからやりがいが感じられない」と語ったことを機に、塩と紫蘇だけで漬ける昔ながらのシンプルな梅干しの研究を開始。大学院を中退し、梅干し屋を始めたという。 そもそも山本さんは今回の法改正をどうとらえているのかと聞くと、意外な答えが返ってきた。 「これまでは漬物製造の届け出で良かったところ、許可制にすることで、それを厳しくしようという動きが今回の改正だと思います。 ただ、梅干しの場合はこれまであまり聞いたことがないものの、白菜漬けや浅漬けのような塩分濃度の高くない漬物の場合、実際に食中毒が起きた事例はあるので、納得の部分もあるんです」 ◆専用の調理場が必要に…「最低でも150万円以上かかってしまう」 届け出から許可制に変わる大きな違いは、専用の調理場を設けることが義務付けられること。具体的には、シンクが2つ必要になることと、場内にトイレが必要になるという違いがある。これまで家のちょっとしたスペースで漬けていた人も多いため、住居と別に製造加工場を作らないと、漬けられないようになるというのが実情だ。