『笑うマトリョーシカ』清家が“中国ルーツ”だった衝撃 道上も親子関係を見つめ直す回に
一見笑っているにもかかわらず、目だけが笑っていない人というのは確かに存在する。妖艶でミステリアスな雰囲気を纏った浩子(高岡早紀)もそうだ。表面上の微笑みとは裏腹に、その瞳の奥には計り知れない企みが潜んでいるかのよう。TBS金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』第8話では、道上(水川あさみ)の前に、浩子が唐突に姿を現す。観る者の心に不穏な予感を抱かせる浩子の存在が、まるで静かな湖面に投げ込まれた一石のように、ドラマに波紋を広げていく。 【写真】場面カット(複数あり) これまでの不可解な事故死について鋭く問い詰める道上。しかし、浩子は多くを語らず、逆に道上の息子・勇気(森優理斗)の身を案ずるかのように「子どもの頃はなるべくそばにいてあげなきゃダメよ」と意味深長な発言を投げかける。「夫が待っている」と言い残し、その場を去る浩子。 あとを追った道上が目にした浩子の夫は「小松」という医師だった。その再婚に、浩子への疑念をさらに募らせる。その再婚には一体どんな隠された動機があるのか。道上の探究心は掻き立てられる。その後、清家(櫻井翔)が故郷・松山に帰省していると知り、佐々木(渡辺大)の店を訪れた道上は、清家から「くれぐれも無茶はしないで」との伝言を受け取ったのだった。 清家を巡る謎の進展が物語に緊張感を与える中、第8話では道上と勇気の親子関係にも焦点が当てられた。今回のエピソードでは、道上が家族とどう向き合うのかが丁寧に描写される。事件の真相究明に奔走しながらも、息子との時間を大切にしようとする道上の姿勢が印象的だ。 ジャーナリストとしての責務と母親としての役割。この二つの立場の間で揺れ動く道上。勇気との貴重な時間の中で、道上は「みんなが知るべきことをちゃんと知ることができたら、世の中はもっと良くなる」という、父から受け継いだ信念を息子に伝える。この場面は、道上が父の追っていたBG株事件の真相を明らかにしようとしているように、世代を超えて受け継がれる価値観を象徴しているようでもあった。 皮肉にも、清家と浩子の複雑な親子関係の真相に迫る一方で、道上自身も親子関係を見つめ直す第8話。「どちらも諦めたくない」という道上の揺るぎない信念と、息子を思う愛情が垣間見える瞬間に、多くの視聴者が心を打たれただろう。 そんな中、浩子の過去を丹念に調査していた山中(丸山智己)が、衝撃的な新事実を携えて戻ってくる。銀座でホステスをしていた頃、浩子は「劉 浩子」という名を名乗っていたのだ。その知らせを聞いて、道上たちが真っ先に思い浮かべたのは、亜里沙が使用していたペンネーム「劉 麗蘭」だ。 道上は鋭い洞察力を発揮し、亜里沙がこの名を、「恨みを抱いていた人物への当てつけ」として選んだのではないかと推測した。もし「劉 麗蘭」が浩子を指すのであれば、彼女のルーツは中国にあることになる。 この仮説が正しいとすれば、清家がヘイトスピーチの廃止や在留外国人を支援したがっている理由にもつながってくる。こうして、点と点が繋がりはじめた矢先。道上は、在留中国人が頻繁に集う中華料理屋のオーナーから貴重な証言を引き出すことに成功する。 道上の調査により、第8話を通して、新たに判明したのは2つの事実だ。まずは、清家一郎がクオーターだったこと。そして浩子の母親、つまり清家の祖母に当たる「劉 英華」という人物が酩酊状態で繰り返していた言葉が、復讐を意味するものだったことだ。事件の核心に潜む深い闇を予感させる新事実は、道上たちの捜査をさらに複雑な様相へと導いていくのだろう。
すなくじら