寺院の柱から奪われた天女の彫刻ほか1440点をインドに返還。悪名高い密売者による事件が一つ解決
マンハッタン地区検事局は、1440点の美術品をインドに返還したことを発表した。作品の価値の総額は1000万ドル(約15億6400万円)に相当するという。 これらの作品は、有罪判決を受けた悪名高い美術商、サブハシュ・カプーアやナンシー・ウィーナーらとつながりのある犯罪組織の密売ネットワークに関する捜査の一環として押収。なかでも二つの美術品は、1993年にメトロポリタン美術館に収蔵され、マンハッタン地区検事局の古遺物密売部門(ATU)によって押収されていた。 その一つが、1980年代初頭に寺院から略奪された天女の砂岩彫刻で、もう一つが、1960年代初頭にインド北西部の村から盗まれた、灰緑色の変成岩で作られたタネサール族の地母神の彫刻だ。 マンハッタン地区検事局が11月13日に発表した声明によれば、寺院の柱を彩っていた天女の砂岩彫刻は、柱から削り取られたのちに二つに分断され、カプールの指示によって1992年2月にロンドンからニューヨークに密輸されたという。この彫刻は専門家によって修復されたのち、カプールの顧客によってメトロポリタン美術館に寄贈され、2023年にATUに押収されるまで同館で展示されていた。
タネサール族の地母神の彫刻は、ドリス・ウィーナー・ギャラリーが1968年まで所有しており、その後、二人のコレクターを経て、1993年から押収される2022年まで、メトロポリタン美術館に展示されていた。 マンハッタン地区検事局はカプールに対する逮捕状を2012年に取得。カプールはインドの裁判所において、古美術品の密売により2022年に有罪判決が下されており、彼の身柄の引き渡しは保留中だという。 1440点の古美術品は、ニューヨークのインド総領事館の通称代表を務めるマニッシュ・クルハリーと、米移民・関税執行局においてニューヨークの文化財・美術品・古代遺物部門を率いるアレクサンドラ・ディ・アルマスが出席した式において、インドに返還された。これを受け、ニューヨークの米移民・関税執行局の特別捜査官であるウィリアム・S・ウォーカーは次のような声明を発表している。 「複数年にわたって国際的な捜査が行われた結果、これらの遺物がインドに返還され、歴史上最も悪名高い犯罪者の一人が古美術品を密売した事件がまた一つ解決しました」(翻訳:編集部)
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