驚異的な粘りで0-2からの劇的逆転勝利!! 夏に自信をつかんだ福岡U-18、岡山学芸館撃破で6年ぶりのプレミア復帰!!
[12.8 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ2回戦 福岡U-18 3-2 岡山学芸館 Balcom BMW 広島総合グランド] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 博多から駆けつけたサポーターがスタンド上段に飾っていた弾幕にはこう書いてあった。 「翔け上がれ久永辰徳の息子達」 今季からチームを率いるクラブOBの久永辰徳監督と選手の絆を表すには、これほどピタリとハマる言葉はない。深めた信頼と自信を胸に臨んだ大一番。誰も予想できない筋書きのないドラマが待っていた。 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025参入を懸けたプレーオフの2回戦が8日に行われ、6年ぶりの復帰が懸かるアビスパ福岡U-18(九州1、福岡)が初参入を目指す岡山学芸館高(中国1、岡山)が対戦し、3-2で勝利した一戦は最後の最後まで目が離せない展開となった。 序盤から福岡U-18は2トップのFW前田一翔(3年)とFWサニブラウン・アブデルハナン(3年)の強さと高さを生かし、岡山学芸館の牙城を崩しにかかった。しかし、相手の組織的な守備に苦戦。寄せが早く、良い状態で前線のふたりにボールが入らない。徐々に相手のペースになり、ロングボール主体の攻撃を自陣で跳ね返す時間帯が続いた。 0-0で折り返した後半。チームは出端を挫かれる。9分、ハーフタイム後に投入されたFW香西健心(3年)に左サイドから中央に切り込まれ、右足でゴールを決められた。追いかける展開になった直後の12分にも、MF池上大慈(3年)に左サイドを破られて追加点を許してしまう。 負けたら終わりの一発勝負。2点差を跳ね返すべく、攻勢に転じるが、中盤を攻略できない。岡山学芸館の主将MF岡野錠司(3年)を中心に中盤で素早く寄せられ、前半同様に良い形でボールを繋げなかった。 しかし、25分だった。キャプテンの右SB池田獅大(3年)が右サイドからアーリークロスを入れると、これが風に乗ってゴールにそのまま吸い込まれる。運も味方にして1点を返すと、ここから怒涛の反撃がスタート。右サイドハーフのMF井上雄太(2年)、左サイドハーフのMF武本匠平(1年)が果敢に仕掛け、前田一とサニブラウンにもボールが入るようになった。相手を飲み込むと、32分にはチームを牽引してきたエースストライカーが魅せる。前田一が相手GK福地煌矢(3年)のキックをミドルゾーンでカットすると、一人でゴール前まで運ぶ。右サイドの角度がない場所からのシュートだったが、腰をうまく回転させて打ち込み、逆サイドネットに突き刺した。 同点に追い付くと、完全に流れは福岡U-18へ。「最後は内容じゃないですから。結果なんで。よく最後の最後まで足を止めずに走り切ってくれた」(久永監督)。最も苦しい時間でも戦い続けると、土壇場でFKの場面が巡ってくる。 45+3分。表示されたアディショナルタイムは2分で、ほとんど時間は残っていない。左サイドからMF楢崎佑馬(3年)が右足で入れたボールは一度クリアされたが、懸命に拾って再びゴール前に入れる。そこから粘って繋ぎ、サニブラウンが身体を張って相手GKの前にボールをこぼす。相手の守備網を掻い潜り、CB樺島勇波(2年)が押し込んだ。その直後に試合終了のホイッスルが鳴り、3-2の逆転勝利を収め、6年ぶりとなるプレミアリーグ復帰が確定。感情を爆発させた選手とスタッフが喜びを分かち合い、最高の瞬間を迎えた。 今季から指揮官となった久永監督は「個を育てながら、個人の特徴が出るシステムや戦術を考えていった。決して、システムありきでチームを作ったわけではない」とし、それぞれの個性を引き出しながらベースとなる戦う姿勢を選手に植え付けた。それと同時に指揮官はは選手たちと向き合い、信頼関係の構築にも精を出したという。 「高校生だからまずは認めあげないといけない。その中で信頼関係を作って僕自身を認めてもらった上で、いろんな議論ができるようにした。言動やプレーが伴っていない時はもちろん指摘したり、厳しい言葉を並べたこともある。なので、指導者というよりも親父に近い感じかもしれません」 そうやってチームは結束を深め、開幕からプリンスリーグ九州1部で上位争いを展開。しかし、本格的に手応えを得たのは夏だったという。 「かなり自信になっている。全国大会でもベストパフォーマンスを出せた」 U-18クラブユース選手権の九州予選では準決勝で鳥栖U-18、決勝で大分U-18を下して優勝。全国大会ではベスト4に入り、上のレベルでも戦えることを証明した。 そこから一気に自信を掴み、夏以降はリーグ戦で2トップを相手に警戒されるゲームも増えたが、今度は前田一とサニブラウン頼みではなく、後ろから繋いでいくサッカーにもチャレンジ。チームとして引き出しを増やし、最後の参入プレーオフでは勝ち切ることができた。 全員の力で掴んだプレミアリーグに挑戦する権利。だが、終わりではない。ここからがスタートだ。 (取材・文 松尾祐希)