たった1回で身も心も軽快に!「死にたい」と思い詰めた会社員を救った驚きのカウンセリング
トラウマを簡単に、かつ驚くほどすみやかに克服できる画期的な方法があるとしたら、試してみたいと思いませんか? ある特定の一点(スポット)を、何分間かボーッと見続けるだけの「ブレインスポッティング(BSP)」はおすすめです。一人でもできる画期的なメンタル・ケアの実践法を、公認心理師である著者が書いた『一点をボーッと見るだけ! 脳からトラウマを消す技術』(講談社刊)から紹介します。 【画像】死刑囚が「アイマスク」をするヤバすぎる理由
カウンセラーがいたほうが望ましい。それはなぜか?
基本的にBSPのセッションは、カウンセラーのもとで行われるのが望ましいとされています。クライエントがトラウマと深くつながり、なおかつ「耐性内(脳が記憶を処理しているあいだ、冷静な状態でトラウマ記憶とつながっている)」の状態を維持したい……そう考えたとき、強い支えになってくれるのがカウンセラーだからです。BSPのセッションには、臆せず心してトラウマ記憶とつながる作業が含まれます。これは目の前にカウンセラーがいると、とてもしやすい作業なのです。 その理由は3つあります。クライエントがトラウマ記憶に集中できるよう、安心できる環境を整えてくれること。怖いときは助けてくれ、共感的な理解のもとサポートしてくれること。また、クライエント自身が見られない身体部位まで観察し、トラウマ記憶に最もフォーカスできる目の位置を特定できること、などです。 トラウマ記憶と十分につながること、それが克服のための条件でしたが、カウンセラーの存在と適切な支えがあれば、より深く・冷静にトラウマと向き合い、克服できるチャンスが生まれるのです。
日常のトラウマからくるストレスは簡単に軽減できる
それでは、実際のカウンセリングの様子をみてみましょう。第一回目の記事に登場した、会社員の中山和夫さん(仮名)42歳のケースです。 妻の真理さんとふたり暮らしの中山さん。ある日、離れて暮らす妻の実母が病に倒れて介護が必要になったため、妻が実家に引っ越して母の面倒をみることになりました。その後、いつもの仕事に加えて家事もこなさなければいけなくなった中山さんは、日々の忙しさに疲弊し、しまいには「死にたい」と思うほど精神的に追い詰められていきます。そんなときにBSPのセッションを受けました。その2回目のセッションの模様です。 中山さんの場合は、生活のなかで「つらい出来事」「嫌な出来事」がくり返し起こり、それによってできた、たくさんの小さな心の傷が彼を苦しめていました。肉体の疲労もその苦しみを深くしていたと考えられます。 中山さんは「身軽になった」と表現していましたが、日常のトラウマからくるストレスが軽減された結果、そう感じられたのでしょう。彼が感じていた程度のストレスであれば、ひとりでできるBSP(セルフ・スポッティング)で解消することも不可能ではありません。それについては記事の後半で詳しくご紹介します。 後編記事『「ボーッと見るだけでストレスが消える」公認心理師が教える驚きのトラウマ解消法』へ続く。
鈴木 孝信(公認心理師)