長野県の宿泊税300円導入案 業者の不安強く、軽減求める声も
観光振興の財源とするため、2026年度の導入を目指している宿泊税について長野県は18日、宿泊業者や一般県民から話を聞く「意見交換会」を長野市で開いた。9月に制度の骨格を発表したが、いまだに業者らの不安が大きく、制度に反対する意見や、導入を容認するとしても税の負担軽減を求める要望が相次いだ。これに対し県は、根幹となる1人1泊300円徴収の計画変更には難色を示した。【去石信一】 税額については、せめて200円にという声が会場から多く出た。低額の宿泊施設ほど客の負担感が増し、利用を敬遠されかねないためだ。同様の理由で、定率制や宿泊料金に応じた段階的増額の案も出た。 一方、素泊まり3000円未満としていた免税点は、引き上げの方針を示した。具体的な金額は示さなかったが、県内に多数ある低価格の小規模宿泊施設の関係者からは1万円未満や7000円未満との要望が出た。 課税免除の対象も、「修学旅行などの学校行事の参加者」から「文化や運動に関係した中学~大学の部活動や合宿」にも広げる方針を示した。これにより、年間の税収見込みは45億円から41億円に減るという。 県は、1泊200円、免税点5000円未満とした場合、見込み額はさらに下がり22億円になると説明。阿部守一知事は「45億円の北海道、58億円の沖縄県と対抗できない。県の課税に加えて、独自に課す方針の松本市や軽井沢町、白馬村などはいいが、そうでない市町村も含めて県全体の観光ポテンシャルを上げるためには必要な額」と、1泊300円への理解を求めた。 このほか、会場から宿泊業者の会計システム変更への金銭負担、宿泊客に徴収を説明する労力と心理的負担への不安の声も出た。有効な使途と、その明確化も不可欠と訴える意見もあった。1カ月単位など仕事で長期宿泊する客からも取るのかとの質問に、県担当者は「下宿契約にすれば課税されない」と説明した。 県は当初、税の名前を「観光振興税」としていたが、ビジネス客の理解を得やすく、他の自治体も取り入れている「宿泊税」に変更した。導入に向け、県議会11月定例会に関係条例案の提案も目指していたが、宿泊業者らの懸念が大きく見送った。関係者の意見を聴きながら、制度設計の調整を進めるという。