「出口」を決めず「入口」に入ってはいけない…それが投資のイロハだ!(黒岩泰)
【シニアのためのマネー講座】#98 コンビニに入ったら、買い物をして出る。電車に乗ったら、目的の駅で降りる。トイレに入ったら、用を足したあとに出る……。物事には、入り口があったら必ず出口があるのだ。 トヨタ本体でも不正発覚でGDPにまた打撃?今年1~3月期マイナス成長はダイハツの不正も一因 お化け屋敷に入って、ちょっと涼しいから「ここに住もう」なんていう人はいないはず。そこそこ怖がらせてもらったら、外に出る……これが一般的である。 でも、投資の世界では、これが守られないケースが多い。先日、空売り投資家のスコーピオン・キャピタルが、半導体大手レーザーテックに対して、「不正会計の疑いがある」と噛みついた。 そのニュースが流れると、株価はあっという間に下落。多くの投資家が、投げ売りを出した。彼らいわく「怖いから売った」のだという。 でも、「こういったニュースが流れたら、最初から売るつもりだったのですか?」と尋ねたくなる。単に動揺して売っただけではないのか、本意ではなかったはずだ、と勘繰りたくなる。 個人投資家によくあるタイプが、出口を決めずに勝手に入り口に入ってしまう人。「買ったら儲かる」という言葉を信じるのは良いのだが、「こうなったら売る」という“出口”を決めていないケースが多い。つまり、「行き当たりばったり」なのだ。 トイレの話でいえば、用を足しているときに、廊下で物音がしたら、パッと飛び出すんですか? パチンコの確変中に、おなかがすいたら帰るのですか? 「ここからが一番近いんだよね」と、高速道路で路駐して下りるのですか……絶対にしないはずだ。 目的をちゃんと達成させてから、終わらせるはずである。 ■「狼狽売り」はもってのほか だから、先ほどのケースでも、「狼狽売り」なんていうのはもってのほか。もともとの「出口」ではないからだ。半導体の成長性で買ったのであれば、それを信じて持ち続けるしかない。 シニアくらいのベテランであれば、海外投資家の「能書き」「戯言」に、付き合っていられないことぐらい分かるだろう。 ……となると、棺桶の中に入ったら、灰になるまで出てはいけない、ということですね? もちろん、そういうことになる。「やっぱ死ぬのをやめるわ」などと言いだしたら、厄介なことこの上ない。「最後まで出口のないヤツ!」と、あの世でも罵詈雑言の嵐だろう。 (黒岩泰/株式アナリスト)