元気なシニアのワンちゃんは軟便になることが…まずフード変更で対策を【ワンニャンのSOS】
【ワンニャンのSOS】#88 ワンちゃんはシニアになると便が緩くなることがあります。そこに体重減少が重なると飼い主さんは心配でしょう。 【写真】NY州の公園に捨てられた17歳の老犬の運命は…ガリガリに痩せ骨が浮いて見える状態で 先日、12歳のワンちゃんを連れてこられた方もそうでした。少し前に引っ越されて近所の動物病院に転院し、そこで血液検査や便潜血検査、エコー検査、X線検査などのフルコースを受けたものの、異常ナシとのこと。「それはおかしい」と久しぶりに当院を受診されたのです。 飼い主さんは翌日から出張のため、3泊4日で預かって診ることになりました。 転院先の動物病院はかかりつけになって日が浅く、年齢や症状から腫瘍や消化器系の異常が疑われるためフルコースの検査自体に問題はありません。 そんないきさつから私が疑ったのが「タンパク漏出性腸症」でした。 膵臓は脂質やタンパク質を分解するパンクレアチンという酵素を分泌しますが、加齢によってその分泌が枯れてくることもあります。そうすると脂質やタンパク質が十分に消化されず、それらが不消化物として便に含まれるのです。 同じような症状はヒトでも起こります。若いころは平気だった脂っこいものを、中年が食べると胃がもたれて便が緩むことは珍しくありません。読者の皆さんも経験があるはずです。 初日、スタッフに便の採取を頼むと、案の定、黄ばみが強い軟便。便を調べると、タンパク質や脂質がたくさん含まれていました。そうとわかれば処方できるのはパンクレアチンです。この薬は粉末で甘く、フードにかけると、ほとんど嫌がることなく食べてくれます。それで酵素の不足分を補い、症状の改善が期待できるのです。 預かったワンちゃんにもこの薬を服用させると、翌日は便の色が黄から白に。2日目には硬くなり、4日目はしっかりとした便になり、それを見た飼い主さんは驚かれていました。これが診断的治療です。すでにフルコースの検査がなされていて異常ナシだったので、すぐに判断することができました。 ■繊維質が豊富なフードに替えてみて ワンちゃんやネコちゃんがシニアになって、便が軟らかく、黄ばみが強くなってきた。それで痩せてきたけど、元気はある。そんなとき、飼い主さんもこの症状を疑い、試しにフードを替えてみることをお勧めします。繊維質が豊富なフードにして便が改善すればタンパク漏出性腸症の可能性が大きいでしょう。それでも良くならなければ病院へ。そんな手順でもよいと思います。 タンパク漏出性腸症は獣医師ならよく知っていますが、若年の病気としてとらえがちで、加齢による酵素の分泌低下への認識は少ないかもしれません。かかりつけの関係が薄かったり、初診だったりするとなおさらです。そんな背景があることからも、まずは飼い主さんによるフード変更で様子を見れば高額な検査費用を負担せずに済むでしょう。 (カーター動物病院・片岡重明院長)