部下に任せるマネジメントには限界がある。シリコンバレーで物議を醸す「新リーダー論」とは?
Yコンビネーターの共同創設者ポール・グレアムによる新しいエッセイが、シリコンバレーのリーダーたちの間で、「経営者がどの程度まで仕事を従業員に委任すべきか、それとも経営者自らが従業員の仕事に携わるべきか」という議論を呼んでいます。
賛否を呼ぶマネジメントスタイル「ファウンダーモード」
議論を呼んだグレアムの記事『ファウンダーモード』は、AirbnbのCEOブライアン・チェスキーが8月に行なった講演をきっかけに執筆されました。 チェスキーはその講演で、自分の会社を含む大企業で、リーダーがマニュアルどおりの委任中心の管理スタイルを採用したあとに、しばしば苦戦する理由について語っています。 グレアムはそのMBA的なアプローチを「マネージャーモード(管理者モード)」と呼び、代わりの方法を提案しています。それがタイトルにもなった「ファウンダーモード(起業家モード)」。これは、スティーブ・ジョブズがかつてAppleを運営していた方法に似ていると彼は主張します。 シリコンバレーでさえ、ほとんどの人は、「スタートアップをスケールさせるにはマネージャーモードに切り替える必要がある」と暗黙のうちに思い込んでいます。 しかし、マネージャーモードを試みた起業家たちの困惑や、彼らがそれから抜け出そうとする試みの成功から、別のモードの存在を推測することができます。 このようにグレアムは書いています。
従来のマネジメントとの違い
では、この2つの異なる考え方とは何でしょうか? グレアムは詳細には踏み込んでいませんが、彼の大まかな主張は、マネージャーモードは直属の部下に仕事を委任し、そのあとの展開を懸念しないというもの。「優秀な人材を採用し、彼らに仕事をさせる余地を与える」と彼は要約しています。 一方で、ファウンダーモードは、経営者が組織図の上層部から下層部にわたって会社により直接的に関与することを促すものです。 具体例は少ないものの、グレアムはファウンダーモードが実際にどのようなものか、2つの例を挙げています。 1つは、管理職が直属の部下以外の従業員と会うスキップレベルミーティングを増やすこと。もう1つは、職位がもっとも高い人ではなく、もっとも「重要な」従業員を対象にした社内リトリートを行なうことです(重要性をどう評価するかについては説明されていません)。 明らかに、2000人規模の会社を、会社が20人規模だった時と同じように経営し続けることはできません。ある程度の権限委譲が必要です。 グレアムはこのようにも書き、さらに脚注で「無能なマネージャーがファウンダーモードを言い訳に、マイクロマネジメントを行なう可能性がある」と語りつつ、彼は「それでも、この方がうまくいく」と付け加えています。 起業家にはできるけれども、マネージャーにはできないことがあります。そして、それをしないことは起業家にとって違和感があります。 なぜなら、それは実際に間違っているからです。