いったいなぜ…「トヨタに学ぼう」日本車を絶賛する”ドイツのニュース番組”の不気味さ
いま日本が注意すべきこと
緑の党が主導してきたグリーン政策は、政府が国民にプレッシャーを掛け、規制や規則でがんじがらめにしたにもかかわらず、現在一つ、また一つと撤回されつつある。このままではグリーン政策どころか、経済自体が潰れてしまうからだ。つまり、計画通り行っていないのはEVだけではない。 たとえばドイツ政府が大々的に宣伝している水素戦略では、ドイツが水素生産のパイオニアになり、脱炭素世界を先導するという夢がまことしやかに掲げられ、多額な研究開発費がつぎ込まれているが、先週、ザクセン=アンハルト州の州知事であるハーゼロフ氏(キリスト教民主同盟)が、「実用は今世紀は無理」と引導を渡した。多くの政治家が、思っていても口に出せなかったことだ。では、来世紀に実現するとして、それまでお金が保つのか? また、緑の党がエネルギー危機にもかかわらず無理やり止めてしまった原発についても、最近になって再稼働しようという話が出てきた。それどころか、温暖化の原因をCO2だけに絞っている現在の気候政策そのものが、あやふやな論拠もろとも再考される可能性さえ否定できない。 この調子では、2035年にガソリン車やディーゼル車の新規登録を停止するという計画も、暖房の燃料は少なくとも65%が再エネ由来でなくてはならないとする計画も、何らかの理由で修正されるかもしれない。どれも国民の負担が大き過ぎて、経済が崩壊しかねないからだ。そうでなくても、ドイツはすでに不況に突入している。 ただ、追い詰められた時にヨーロッパ勢が考え出すことと言ったら、挽回のための努力ではなく、相手の足を引っ張ることであるのは毎度の話だ。だからEUは、自分たちが不利であると見たEV競争では、進出著しい安くて機能的な中国製EVに、本国からの違法の補助を受けているという理由で制裁の関税を掛けるつもりだ。 つまり、トヨタのハイブリッドも快調に売れ続ければ、ある日突然、“不正発見!”というような話が降って湧き、手ひどくバッシングされる可能性が十分にあると、私は思っている。 そうなった時には、トヨタを褒めてくれた第2テレビも、モラルの拳を振り上げながらトヨタに突進してくるだろう。日本人よ、要注意である。
川口 マーン 惠美(作家)