いったいなぜ…「トヨタに学ぼう」日本車を絶賛する”ドイツのニュース番組”の不気味さ
問われるべきドイツメディアの責任
ただ、正直言って私は戸惑った。なぜこんなに掌を返したように褒めるのか? ドイツ人が突然、謙虚になったとは、どうしても思えなかった。特にVWは、腹わたが煮えくり返っているのではないだろうか。しかし、実を言うと、私も違った意味で、この第2テレビの報道の仕方には不満を感じた。 現在、VWが二進も三進も行かなくなっている根本的な原因は、2015年のディーゼル不正事件の後、100%EVに転換するなどという出来もしないことを目標に掲げたからだということは間違いがない。しかし、ドイツ政府はそれ以前より、大々的なEVブームを作り上げようとしており、メルケル首相も、「2020年にはドイツに100万台のEVを走らせる」と豪語していた。 そして、メディアがそれを全面的に支援し、懐疑的な声はほとんど報道しなかった。つまり、国民はあらゆる方向から、EV100%は正道であり、また、実行可能であると啓蒙されることになったのだ。 そんな中、VWが旧東独地域のツヴィッカウ工場を全面的にEV用に作り替えたのが2021年。23年末、ドイツではEVの全登録数が初めて100万を超えた。ところが、その後も順調に売れるはずだったEVは、今、全く売れない。特に、昨年、政府の購入補助が切れた途端に売れなくなった。現在、VWのツヴィッカウ工場の閉鎖は避けられない模様だ。 つまり、VWがトヨタのように「顧客の求める車」を模索せず、政府の補助を当てにし、補助がなくなった途端に売れなくなるような車をせっせと生産し、挙句のはてに苦境に陥っているのは、確かに自業自得かもしれない。 しかし、それを“英断”として持ち上げ、全面的に応援してきたメディアの責任はどうなるのか。今になって、VWの経営方針が杜撰だったとか、経営モラルが破綻していたとか、それどころかトヨタを見習えなどと、どの口が言うのか? 彼らはこれまでの主張はすっかり棚に上げ、冷静な思考の持ち主は自分たちだとでも言うつもりだろうか?