三菱重社長、新型原発の基本設計はほぼ完了-早期の建設決定望む
(ブルームバーグ): 三菱重工業の泉沢清次社長は21日、革新軽水炉「SRZ-1200」の基本設計はほとんど終わっていると明かし、建設地が決まれば10年程度で運転開始ができるとの見通しを示した。
泉沢社長はブルームバーグのインタビューで、建設場所が決まらないと設計できない部分を除き、基本設計は「ほぼ終わっている」と述べた。福島第1原発事故後に原発の建て替えや新増設が滞っていることに伴う技術伝承の問題もあることから、早期に建設地を決めて計画を前に進めて欲しいと語った。
岸田文雄政権は2023年2月に閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で、再生可能エネルギーや原子力など脱炭素効果の高い電源を「最大限活用する」と表明。中長期のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の改定でも、原発の増設を認めることが検討されていると報じられるなど、新増設の計画が具体化すれば、原子炉メーカー各社が恩恵を受ける公算が大きい。
三菱重は既存の加圧水型軽水炉(PWR)を改良した「SRZ-1200」の開発を進めている。同社によると120万キロワット級の設備で、福島第1原発事故の教訓を反映し安全性を向上している。5月に発表した24-26年度の事業計画では、原子力を防衛・ガスタービンと並ぶ注力分野と位置づけ、3事業で売上高を計1兆円伸ばすとした。
株式市場の期待も高い。SMBC日興証券の谷中聡アナリストらは17日付のリポートで、三菱重を「防衛・原子力銘柄の主役」だとし、力強い株価が今後も続くとの見方を示した。年初からほぼ2倍となった株価は上場来高値の水準にある。
泉沢社長は、年間5000億円の防衛・宇宙事業の売上高を倍増する目標について、「計画通りに進んでいる」と述べた。防衛事業では人員を3割増やす方針であるほか、生産能力の拡大に向け「工場の増設、場合によっては新設もあるかもしれない」という。