豊昇龍をすくい投げで破った王鵬（奥）＝両国国技館（相川直輝撮影）

両国国技館で13日に行われた大相撲秋場所6日目。結びの土俵の主役は、またも王鵬だった。琴桜に初めて勝った5日目に続き、この日は同学年の豊昇龍を破って大関戦2連勝。「結びで2日連続、すごく運がいい。みっともない相撲は取れないと思っている」。殊勲の星にも表情ひとつ変えず、35本の懸賞の束をゆったり受け取った。 【写真】秋場所5日目は大関琴桜を寄り切りで制した王鵬 3秒余りの攻防の中で、王鵬の落ち着きぶりが際立っていた。右で張りながら右上手を取りにきた豊昇龍に対し、「頭にない立ち合いをされた。向こうが（自分の立ち合いを）気にしてくれたのかな」。力強く踏み込むと、すぐ右を巻き替えて浅いもろ差しに。そして相手の右上手を切った。 苦しくなった豊昇龍が掛け投げで局面を打開しようとしてきたが、それは織り込み済み。「あの体勢になったら、どこからでも投げが来る。頭に入れてない方がおかしい。待っているくらいの気持ちだった」。すくい投げを打ち返して大関を土俵に転がした。 師匠の大嶽親方（元十両大竜）は場所中、考え込みやすい王鵬にアドバイスは送らないという。「自分の考えと違うことを言われると、やろうとして迷ってしまう。自分自身で考えて、やる力が大事。試行錯誤することが成長につながる」。それができると信じているからだ。 大横綱大鵬の孫として注目を集める24歳は、着実に力を付けつつある。「良い相撲を取っても、悪い相撲がある。集中力を続けられたらいいですね」と王鵬。三役の座は、その先に待っている。（宝田将志）