大統領選直前、プーチン陣営を揺さぶる ウクライナの猛攻──「ロシアは安定していない」
<大統領選大勝は確実だが、戦争継続への支持は減っており、揺さぶられればプーチンに対する支持が減る可能性もある>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にはここ数日、悪いニュースが続いている。ウクライナから飛来して60機以上の大規模なドローン攻撃で、ウクライナと隣接するベルゴロド州の連邦ビルと石油精製所が被害を受けた。また反プーチンの外国人義勇軍が複数地点で国境を侵してロシアに入り、小さな村を掌握した。 【動画】なぜこんなに遠い? ロシアウォッチャーの間で話題になった、プーチンと聴衆の距離 おりしも、ロシアでは3月15日~17日に大統領選挙が行われる。こうした悪いニュースは、国民が投票に向かう数日前に飛び込んできたことになる。悪夢だ。 今回の大統領選挙で、プーチンは大勝を予想されている。世論調査によれば、欧米からは不正選挙の疑いがあるとはいえ、プーチンは国民から大きな支持を獲得してきた。 だが同時に、プーチンがウクライナに仕掛けた戦争に対する支持は減少しており、最近のネガティブなニュースにプーチン陣営は神経をとがらせているだろう。 「プーチンに対する国民の支持は、プーチンの存在が、1990年代の危機の時代とは対照的な安定した時代の柱であるというイメージの上に成り立っている」と、ソビエト崩壊後の国際政治の専門家であるジェイソン・スマートは本誌に語った。「プーチンは国民に、ロシア国土に対する支配は万全だと思わせたいのだが、親ウクライナ義勇軍によるロシア南部への侵攻は、それがかなりあやしい状態にあることを示す強力な証拠となる」 開戦以来最大のドローン攻撃 ウクライナのために戦うロシア人で構成される義勇軍のグループ、自由ロシア軍団とロシア義勇軍団は12日、ロシア国内を「攻撃中」であると発表した。 ウクライナとロシアの情報筋によると、軍団は装甲車でロシア西部のベルゴロド州とクルスク州に入ったという。ロシアのテレグラムチャンネル「War Gonzo」は、戦闘員たちは迫撃砲と大砲で援護されていると伝えた。 自由ロシア軍団はその日のうちに、クルスク州のティオトキノ村を完全に掌握したと発表した。ロシア国防省はその前に、「ウクライナのテロリスト集団」による越境攻撃は「阻止した」と主張していた。 義勇軍による軍事行動のニュースの前に、ロシア国内で複数の夜間ドローン攻撃があったことも伝えられていた。ロシア当局の報告によると、ウクライナのドローンはロシアの9つの地域を標的としており、ウクライナによるロシアへのドローン攻撃としては開戦以来最大規模だったとみられる。 ドローン攻撃の標的のひとつは、ベルゴロドの政府庁舎だったようだ。同市の市長は後に、この攻撃で4人が死亡したと報告した。 アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)は9日、ウクライナ軍が前夜ロシアのロストフ州でドローン攻撃を行ったという報告があり、長距離レーダー探知機A-50を改修する航空機工場を攻撃した可能性があると発表した。この攻撃の結果、A-50が2機破壊されたという。